カニの食べ方
その男はカニが好きだった。
そんな男のところに、実家からタラバガニが送られてきた。
一匹ではあるが立派な大きさで、一人で食べるなら食べ応えがある量だった。
「やった。どうやって食べようかな」
カニは色々な食べ方がある。
焼きガニ、茹でガニ、カニ鍋といったカニをメインとした料理はもちろん、パスタやサラダの具材としてカニを使っても旨い。
しかし、男の食べ方は決まっていた。
「やっぱり、シンプルに焼きガニか茹でガニかな」
素材の味を活かした料理方法で、カニ本来の味を味わうのが好きだった。
だから、男は焼くか茹でるかで迷う。
「足を五本ずつ焼きガニと茹でガニにしてもいいんだけど、本体から足を取ると美味しさが逃げちゃうんだよなあ」
カニは男の好物だ。
そのカニの味を落とすなど、男にとってはあり得ないことだった。
「香ばしい焼きガニか、しっとりジューシーな茹でガニか、どちらにするか」
香りを優先するなら間違いなく焼きガニだ。
けれど、滲み出る汁と一緒に食べる茹でガニも捨てがたい。
それに茹でたときの、ふわりと漂う香りは、焼いたときの香ばしさに匹敵する。
それは自分で茹でたときしか体験できない。
「よし。茹でガニにしよう」
男の心は決まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます