お年寄りの昔話
あるところに話好きなお年寄りがいた。
そのお年寄りは、孫に昔話をするのが好きだった。
「ワシは子供の頃、田舎で暮らしておってのう」
都会で暮らす孫にとって、お年寄りの語る田舎暮らしは好奇心をくすぐられるものだった。
だから、お年寄りがたまに同じ話をすることがあっても楽しそうに聞いていた。
子供が夜寝るときに親に絵本の読み聞かせをねだるようなものだ。
同じ内容だとしても、好きな話は何度聞いても飽きることがない。
「家の庭には、当時は珍しかったキウイが1本植わっておってのう。ご近所にお裾分けすると、喜ばれたものじゃ」
お年寄りが子供の頃に暮らしていた家は、今はもう無い。
そのことを寂しく思いつつも、その頃の体験が孫に聞かせる話のネタになっていると考えれば、お年寄りは寂しさを忘れることができた。
「そうそう。キウイは、キーウィと鳴くのを知っておるか? それが名前の由来にもなっているそうじゃ」
「え? キウイが鳴くの? 果物なのに?」
「はっはっは。鳴くと言ったのは、キウイの名前の由来になった鳥のことじゃよ」
たまに茶目っ気を出すお年寄りだが、それも話を盛り上げるスパイスになり、孫を飽きさせない。
孫はいつまでも楽しそうに話を聞いていた。
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