塩の結晶

 あるところに、少しませた少女がいた。

 彼女にとって、宝石は憧れの物であったが、お小遣いで買うことはできない物だった。

 そんな彼女が、学校で塩の結晶の作り方を教わった。

 

「宝石って確か鉱物の結晶だよね。塩の結晶も宝石の一種なのかな」

 

 そんな動機から、彼女は塩の結晶を作ってみることにした。

 

「えっと、まずは水の塩を入れて……」

 

 彼女は鍋に水を入れ、そこに大量の塩を入れる。

 そして100℃に沸騰させてよくかき混ぜ、塩を限界まで溶かす。

 

「ゆっくり冷やした方が、大きな結晶になるんだよね」

 

 彼女は学校で教わった通りに、発泡スチロールや毛布で包んで保温する。

 そして一日待つ。

 

「できてるかな」

 

 翌日、彼女が確認すると、鍋の中に塩の結晶ができていた。

 しかし、それは期待していた大きさではなく、とても小さいものだった。

 

「たしか、水を蒸発させれば、ちょっとずつ大きくなっていくんだよね」

 

 彼女は鍋を外に出し、天日でゆっくり水を蒸発させる。

 すると、水が減るにつれて、塩の結晶が少しずつ大きくなっていった。

 

「わあ、小さい宝石みたい」

 

 値段にすれば大したことはない。

 しかし、苦労して作った結晶は、彼女にとって宝石と同じくらい価値のある物になった。

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