悪戯っ子

 あるところに悪戯好きな小学生がいた。

 どのくらい好きかというと、エイプリルフールの1ヶ月前から準備するくらいだった。

 

「せっかくなら、同級生を全員騙したいな」

 

 その子のクラスには20人の生徒がいる。

 だから、同級生を全員騙すためには20個の嘘を用意する必要があった。

 

「けっこう大変だけど、1日1個考えたらいいから、なんとかなるかな」

 

 その子は、成績はあまり良くなかったが、悪戯をするためには努力を惜しまない性格だった。

 

「アツシくんは食いしん坊だから食べ物についての嘘で、アケミちゃんはアイドルグループが好きだから……」

 

 ただ嘘を考えるだけではなく、一人一人に合った嘘を考えた。

 かなりの労力だったが、毎日コツコツ準備したおかげで、3月の最終日に全員分の嘘を用意することができた。

 しかし、そこで重要なことに気付いた。

 

「あっ! エイプリルフールは学校が休みの日だ!」

 

 それは、日めくりカレンダーを見ていたときだった。

 

 3月30日(土)

 

 カレンダーにはそう書かれていた。

 

「どうしよう。考えた嘘が無駄になっちゃう」

 

 電話やメールで騙すことはできるが、騙したときのリアクションを見ることができない。

 考えた末に、その子は全員の家を回ることにした。

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