訪問者

 あるところに、父親と母親と3人の子供の5人家族がいた。

 両親は共働きで、家には子供達だけでいることが多い。

 普段は子供達の中で一番年上の長男が、弟と妹の面倒を見ている。

 しかし、その日は長男が出かけており、次男と次女しか家にいなかった。

 

 ピンポーン!

 

 呼び鈴が鳴った場合、いつもは長男が対応する。

 長男がいないときにどうするかは、決まっていなかった。

 

「どうしよう?」

 

 突然の事態に、男の子が動揺する。

 

「居留守を使えばいいよ」

 

 女の子は冷静で、居留守を提案する。

 けれど、男の子は心配性だった。

 

「大切な用事かも知れないよ。お父さんとお母さんが困るかも知れないよ」

 

 男の子の言い分を聞き、女の子は別の提案をする。

 

「じゃあ、玄関を開けずに、話だけ聞いてみようか」

「そうだね」

 

 今度は男の子も賛成し、女の子はインターホン越しに訪ねてきた相手の話を聞くことにした。

 

「税務局からきました。還付金の件で……」

 

 相手によると、今日が期限の還付金があり、振り込むためには通帳が必要らしい。

 そこで女の子は相手に伝える。

 

「近くの交番に勤めているお父さんを呼ぶので、少し待っていてください」

 

 それを聞くと、なぜか相手は通帳を受け取らずに帰っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る