ドライな関係

あるところに、とてもドライな女性がいた。

 その女性のドライ具合は徹底していた。

 

 例えば食事はドライなものばかりだ。

 好きなカレーはドライカレー。

 好きなフルーツはドライフルーツ。

 好きなアイスはドライアイス。

 好きなビールはスーパードライ。

 

 日常生活もドライだった。

 エアコンは冷房ではなくドライ。

 趣味はドライフラワーを作ること。

 クリーニングはドライクリーニング。

 ドライアイにも悩まされていた。

 

 そんな女性だが、唯一の例外があった。

 恋愛関連だけはドライではなかった。

 

「これ、受け取ってください」

 

 バレンタインデーに手作りチョコレート、クリスマスに手作りマフラーを贈る。

 

「おはよう」

「今なにしてる?」

「おやすみ」

 

 一日に何度もLINEでメッセージを送る。

 

「待った? チュッ」

「ほっぺにご飯粒がついてるよ。チュッ」

「また明日。チュッ」

 

 デート中には、何かと理由をつけて何度もキスをする。


 そんな感じで好きな相手にベタベタする女性だが、そんなときは逆に相手がドライになる。

 

「手作りとか、愛が重い」

「LINEが多く過ぎで、うっとうしい」

「街中でキスは、ちょっと……」

 

 ベタベタするのが仇になり、いつも女性はドライアイを涙で濡らすことになる。

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