川釣り

 ある男が川縁を散歩していると、川で釣りをしている人に出会った。

 興味を持った男は、釣り人に話しかけることにした。

 

「こんにちは。釣れていますか?」

 

 釣り人は男の方を見ることなく返事をする。

 

「なかなか釣れませんね。まあ、釣りはのんびりするものですから、気長にやりますよ」

 

 釣りをしている最中なのだから、水面から目を離さないのは当たり前だ。

 男は気を悪くすることなく、さらに話しかける。

 

「この辺りでは何が釣れるのですか? アユとかですか?」

 

 男にとって、川魚といえばアユだった。

 塩焼きが最高だが、天ぷらも旨い。

 甘露煮は酒の肴にうってつけだ。

 しかし、釣り人は首を横に振る。

 

「この辺りで鮎は釣れませんね。この辺りで釣れるのは、ウナギやアナゴなどです」

「ほう、ウナギやアナゴですか。いいですねえ」

 

 男はウナギやアナゴも好物だった。

 ウナギの蒲焼が旨いのは言う間でもないが、アナゴも様々な料理で楽しめる。

 煮アナゴ、アナゴ寿司、アナゴの天ぷら。

 どちらも甲乙つけがたい。

 

「やはり養殖物より天然物の方が旨いですか?」

「もちろんです。天然物の味が忘れられなくて、こうして釣りに来るくらいですよ」

 

 釣り人の言葉に、男はごくりと唾を飲み込んだ。

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