殺人事件
ある家族が、夕食を食べながらニュースを見ていた。
『○○市△△町で殺人事件がありました。
被害者はこの町に住む女性で……』
事件の現場は家族が暮らす家の近所だった。
母親が不安そうな顔をする。
「怖いわね。犯人はまだ捕まっていないみたい。学校に行くときに気を付けなさいね」
「うん」
母親が子供に注意を促すと、父親が不満そうな顔をする。
「おいおい。俺の心配はしてくれないのか?」
「あなたも会社に行くときは気を付けてね」
「ついでみたいに言われてもなあ」
「あはは、ごめんなさい。あなたのことも、ちゃんと心配しているわよ」
父親が拗ねたような態度をすると、母親が笑いながら謝る。
それにつられて、子供も笑顔になる。
父親が拗ねたのは、暗い雰囲気になりそうだった食卓を和ませるためだった。
『意識を取り戻した被害者の女性はストーカーに刺されたと話しており、警察は犯人の目撃情報を求めています』
しかしニュースの続きを聞き、今度は父親が母親へ注意を促す。
「犯人は男のストーカーみたいだ。昼間は家に一人なんだから気を付けろよ」
「必ず誰か確認してから玄関の鍵を開けるようにしているから大丈夫よ」
ニュースに映る犯人の写真を見ながら、家族は防犯意識を高めた。
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