地球温暖化②

 ある男が会社に出社すると、フロアが涼しいことに気付いた。

 エアコンで室温を調整しているからなのだが、今日に限って男はそのことが気になった。

 

「こんなことをしていたら、ますます地球温暖化が進んでしまう」

 

 海岸近くに家を持つ男にとって、地球温暖化は他人事ではなかった。

 海面が上昇すれば家が水没してしまう。

 朝のニュースでそのことを知った男は、危機感を抱いていた。

 

「設定温度を上げるぞ」

 

 男がエアコンの設定温度を2℃上げると、それに反応して室温が上がり始める。

 すると、男の部下が文句を言い出した。

 

「ちょっと、課長。勝手にエアコンの設定温度を変えないでくださいよ」

「わがままを言うな。みんなのためだ」

 

 男は部下をたしなめる。

 実際、男の行動に文句を言ったのは、その部下だけだった。

 男は自分が正しいと思っているが、部下も引き下がらない。

 

「体調を崩したら、どうするんですか。外は雪がちらついているんですよ」

「そんなもの、服装で調整すればいいだろう」

 

 部下がさらに文句を言うが、男は決して意見を変えない。

 結局、最後は部下が折れることになり、エアコンの設定温度はそのままとなった。

 

「これで少しは地球温暖化を防げるだろう」

 

 男は満足して仕事を始めた。

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