　ある家族が、朝の食卓でニュースを見ていた。

『近年、ますます地球温暖化が進んでいます。

　特に北極大陸の氷が融けることによる影響は深刻です。

　海面が上昇したことにより、世界中の島々が水没しています。

　島国である日本も例外ではありません。

　すでに海岸線が後退するなどの影響が出始めています。

　政府は地球温暖化の対策として……』

　ニュースを聞いていた子供が、不安そうな顔で親に尋ねる。

「ねえ。うちは大丈夫かな？　海の底に沈んだりしない？」

　家族の家は海岸の近くにあった。

　海面が上昇すれば影響を受けるのは間違いなかった。

「ニュースでも政府が対策をすると言っていただろ。大丈夫だよ」

　父親は楽観的に答えたが、母親はそうではなかった。

「政府なんて当てにならないわ。自己責任と言って何もしてくれないわよ」

　母親の言葉に、父親は困った顔をして反論する。

「だけど引っ越すわけにはいかないだろ。家のローンだって残っているし」

「お金と命とどっちが大切なの？」

「どっちも大切だよ。引っ越したって、家賃が払えなくて生活できないよ」

「この家を売ればお金が手に入るわよ」

「馬鹿なことを言うな。まだ新築だぞ」

　不安そうな子供を無視して、父親と母親の言い争いは続いた。

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