第4章「三角関係」
第28話「朝のニュース」
「見てよこれ!」
朝の教室でエレナがスマホの画面を突きつけてきた。
『怪盗赤ずきん シャトレ邸から
怪盗赤ずきん。
最近ニュース番組なんかでよく耳にする名前だ。
「あの人たち、無事だったのね」
やっと慣れてきた女言葉で言う。
シャトレというのは二週間前に遭遇した
「あの本が最大の手がかりだったのに……こんなわけのわからないヤツの手に渡るなんて……」
命からがらエンプティ6から逃げかえった俺たちは、翌日から再び図書館に通い詰め新しい呪解の手がかりを探した。
が、今のところ目ぼしい情報は見つからない。
「しかたないよ。地道に図書館で探そう」
「そうね……。怪盗赤ずきん、次の狙いは『玉手箱』だって」
「なんだそりゃ」
「知らないの? 王立美術館にある国宝よ。これも
怪盗赤ずきん、骨董マニアなのか?
次回の犯行予告は日星日、午後十時、と書かれた画面が消える。暗くなったスマホにエレナの疲れた顔が映りこんだ。
「……昨日の相手もダメだったの?」
「あたりまえでしょ」
鋭い水色の眼光が突き刺さる。
あの日、無断でヘリを使いアウトエリアにいったエレナは、家族に黙っていてもらうかわりに世話係のマヤがもってくる見合い話をすべて引き受ける約束をしたのだった。
おかげでこの二週間でエレナはすでに五回も見合いをさせられている。どの男もエレナのお眼鏡にはかなわなかったようだが。
「お見合いを進める気なんてあたしにはまったく……」
「おはよう、ホワイトさん。スチュアートさんも」
割りこんできたのはさわやか笑顔のイケメン、トバリ・ブライトだった。
まぶしい笑顔に軽く頭を下げて「……どーも」と返す。
なんでイケメンって輝いて見えるんだろうね。気に入らねぇ。
「あらブライトくん。おはよう」
「お話中のところごめん。ホワイトさん、今ちょっといいかな?」
「え? ……私?」
自分を指さしてぱちぱちと瞬く。
トバリがうなずいて、「あたし、席を外したほうがいいかしら?」と気を利かせたエレナが腰をあげる。
いや、とトバリはエレナのほうを向いた。
「スチュアートさんも一緒に聞いてほしい。場所を移したいんだけど、いいかな?」
俺とエレナは顔を見合わせてトバリのあとについていった。
トバリは人気のない廊下の端で口を開く。
「ホワイトさん。僕と決闘してほしい」
「……は?」
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