第19話「人工魔力アーツ」
山の麓に小さな洞窟があった。
「ここね」
エレナが持ってきた地図に目を落として言う。
湿った洞窟の中にゆっくりと足を踏み入れる。
洞窟の壁にはぽつぽつと間隔を開けて電球がついていた。ぼうっと弱い光を発するそれらのおかげで、明かりがなくても進んでいける。エレナが暗視鏡はいらないと言ったのはこのためだったのか。
「でも、廃墟なのになんで電気がついてるんだ……?」
「地熱発電よ」
前を向いたままエレナが言う。俺たちの高い声は濡れた洞窟によく響いた。
「
「習ったかどうかと俺が覚えているかどうかは別問題だ」
「情けないことを堂々と……」
エレナのため息は聞こえないふりをした。
「電力」ねぇ。
俺たちが使うスマホやパソコン、大きなものだと車や飛行機なんかの科学機器はすべて
目の前を歩く俺の幼馴染の美少女、エレナ・スチュアートのご先祖様である。
サガラ・スチュアートが興したスチュアート社は創設者が亡くなったあとも技術開発の先頭を走り続け、今では世界中にその名を轟かせる大企業となっている。
現社長の一人娘のエレナはその跡取りだから、今からお見合いだなんだとうるさく世話を焼かれるんだろうなぁ……。大変だ(他人事)。
ちなみに
弱々しく光る電球を見る。
俺たちにとっては、機械は
文化や時代が違えば常識も違うってことか。俺は特別歴史に関心があるわけではないが、まあ興味深くはあるね。
今俺たちの時代で社会規範となっているエレナ教なんてものも存在しなかったはずだし、そうなると俺たちの常識とはかなりズレた社会ができあがっていたはずだ。
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