第17話「呪いを解く手がかり」

 二時間目のエレナの落胆は、時間が癒してくれたようだ。


「さあ、昨日の続きよ!」


 というわけで昼休み、俺は元気になったエレナに腕を引っ張られ、またもや図書館へとやってきた。


 昨日と同様変身や呪いに関する本を片っ端から借りていく。

 だけど、相変わらず今のところ呪いを解く手がかりは見つかりそうにない……。


 図書館外のベンチに座って古い本を開いていたら、とんとんと肩を叩かれた。


「二人とも、昼休みもお勉強? 偉いわねぇ」


 振り向くと、キャンディをくわえたイオリ先生が立っていた。


 先生は俺の本を覗きこむ。


「呪いのお勉強?」


「はい。ちょっと興味があって」


 あら、と先生は笑った。


「ホワイトさん、誰か呪いたい人でもいるの?」


「いえ、そういうわけじゃ……」


「ホワイトさんなら本当に呪ってしまえそうで怖いわね」


「いやいや、無理ですって! 呪いって難しいみたいですし! ていうか、誰も呪いませんから!」


「うふふ」


 イオリ先生はいたずらっぽく笑ってから、なにか思い出したような顔になった。


「呪いかぁ。そういえば、エンプティ6に呪いの物語を集めた本があるって聞いたことがあるわねぇ」


「呪いの物語?」


 エレナが訊いて、先生が答える。


「『メルヘンズ』という名前の本で旧人類ストリアン時代の遺物らしいわ。誰かがエンプティ6にとりにいったんだけど、ジャンクに追いかけられてる間に落としてしまったんですって」


 俺とエレナは顔を見合わせる。


「でもその本を手に入れるのは難しいでしょうね。エンプティは危険だし、それに旧人類ストリアン時代のものなら考古学的にも価値が高いから、『墓荒らしグレイヴァー』たちも狙ってるでしょうし。……あ、ごめんなさい。お勉強の邪魔してしまったかしら。それじゃあ私はそろそろいくわね」


 飴を口に入れて先生は図書館のほうへと歩いていく。


「……いくよね?」


 エレナが言う。


「少しでも可能性があるなら、いくべきだろうな」


 旧人類ストリアンが遺した呪いの物語『メルヘンズ』。


 もしかしたら、そこに俺の呪いを解くヒントがあるかもしれない。


 ということで、俺たちは週末にエンプティ6に向かうことになった。

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