第15話「マカゼの創作魔法」

 パチパチパチパチ。


 拍手の音。トバリだ。


「すごいな。創作魔法を生で見たのは初めてだよ」


 トバリは本気で感心したような顔で言ってさわやかに笑った。

 なにこいつ、俺のこと好きなの?


 トバリを中心に拍手の輪が教室中に広がっていく。


「ホワイトさん、素晴らしいわ。みんなの前で実演ありがとう。今ホワイトさんはとても個性的な呪文を使いましたね。あれはどういう意味ですか?」


「え、えっとぉ……」


 それを訊かれると大変困る。

 白きパンティの輝きをイメージした魔法だなんて言えるわけがない。


「せ、清潔な下着の白さが、輝いてる……的な……?」


 我ながら意味不明だ。

 ていうか、あれ? これもう「白きパンティの輝き」的なこと言っちゃってない?


 公共の場でいきなりパンツトークをする意味不明な美少女こと俺に、それでもイオリ先生は納得したようにうなずいてくれた。


「『魔法を使う』とは、術者のイメージを具現化するということです。みなさんの頭の中にあるものを表現する唯一の手段、それが言葉です。だから魔法を使うためには、術者が描くイメージを表すための言葉、つまり呪文が大変重要になるのです。例えば『火』と言ったとき、みなさんはどんなものをイメージしますか? 燃え盛る炎をイメージする人もいれば、蠟燭のような小さな火をイメージする人もいるでしょう。もしかしたら人魂のようなものをイメージする人もいるかもしれませんね。

 一つの言葉でも、受け取る人によってイメージするものは違います。だから呪文も、術者それぞれのイメージにあったものでなければなりません。自分のイメージにあった言葉を選び出し、自分の頭の中のイメージに名前をつけてあげる。実在しない『イメージ』を、名付けることによって『魔法』という現象にする。そうして初めて魔法は発動するのです。

 イメージと呪文のシンクロ率が高いほど魔法は威力を増します。だから魔法が得意な人ほど個性的な呪文を使う傾向にあるのです。今のホワイトさんはとてもいい例でした。ありがとう。もう席に戻っていいですよ」


 席に着くとエレナがジト目で睨んできた。


「バカな呪文……」


「バカとはなんだ。これも立派な創作魔法だぞ。それに、今の俺の想像力をかき立てたのはおまえだぞ?」


「は?」


 おっと、危ない危ない。パンツを見たことをバラしてしまうところだった。

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