第14話「魔法の授業」
「人々が争うことなく問題を解決できるように、女神エレナは人間に『言葉』というものを与えました」
黒板の前に立ったイオリ先生が言う。
さすがに授業中にキャンディは舐めていないが、ポケットからはキャンディの棒が四本飛び出していた。
「私たちが世界中の人と話せるのはそのおかげです。
へー。
魔法実験室のそこここから似たような声があがった。
言葉に種類がある、かぁ。よくわかんないけど、会話とか大変そうだなそれ。
「女神エレナが我々に与えた言葉は、魔法にも大いに影響を及ぼします。みなさんは中等部で初級魔法を練習してきましたね。習った魔法を一つでも発動させられる人はどれくらいいますか?」
手を上げた生徒は半分くらいだった。
俺以外は全員中等部からの持ちあがり組だ。
エレナは下唇を噛んでうつむいている。
「思ったよりも多いですね。優秀なクラスだわ。まだうまくできない人も焦ることはありません。魔法を使うということは、最初のうちはとても難しいことだから、できなくて当然です。外部から受験してきた人たちは魔法教育を受けるのは初めてですし、ゆっくり練習していきましょう」
先生はおっとりしたたれ目で俺を見て、にこりと笑った。
「さすが魔法特待生のホワイトさん。魔法教育を受けていなくても、初級魔法は使えるのね」
まあ、入試の前にマジスタ校の中等教育で教わる魔法は一通り勉強したからな。別段難しいことはなかった。
「その歳で創作魔法が使えるんだものね。そうだ。一度みんなの前で見せてくれないかしら?」
先生が教室の端に移動する。
俺は立ちあがって前に出た。
教室中の視線が俺に集まる。
女の子の視線を一人占めだぜ!
……なんて内心で冗談を言ってみても、緊張するものは緊張するのだった。
あと少ないけど、男の視線も一人占めしてるしな。トバリとかすっげーガン見。
サクッと終わらせよ。
目を閉じ、神経を研ぎ澄ます。
俺の集中を邪魔しないためか、教室は水を打ったように静まり返っていた。
脳裏に浮かぶは白い太もも。
ひらひらと揺れるプリーツスカートから、それよりもっと輝く白がチラリと覗く。
パンチラ。
それは不意に訪れる一瞬のときめき。
さっき階段をのぼるエレナのパンツがチラッと見えちゃったんだよね。
まったく、無防備なやつだ。眼福眼福。
脳裏に再生したパンチラの瞬間をじっと見つめ、口を開く。
「“パンティ・フラッシュ”!」
瞬間、閃光がほとばしった。
クラスメートたちがわっと声をあげて、のけぞったり顔を覆ったりとそれぞれにリアクションをとる。
光は一瞬で収まり、教室はシン……と静まり返った。
「えっと……終わりです。光るだけです」
俺が言うと、クラスメートたちは伏せたり閉じたりしていた目を再び俺に向けた。みんな呆けた顔をしている。
次第に教室がざわざわしはじめる。
え……なんでパンティ……? そんな声が聞こえた。
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