第3話ラストラン
「うんしょっ、と…やっぱ真ん中はキツイなぁ…」
僕はロードスターを載せた積載車から降り、サーキットへと足をつけた。
今日は地方ジムカーナの最終戦、西条先輩のラストランだ。
「しょうがないさ。男3人で長時間乗ることなんて想定してないからな。」
なんて言う先輩もかつては真ん中に座ってたのだろうか。
「しっかし、オレの最後のジムカーナがこんなに晴れるとはなぁ…ありがてえよ。よし、クルマ下ろすの手伝ってくれ。」
「は、はい!」
クルマを下ろし、空気圧を確認する。競技前の車検にも合格し、準備を進めることにした。
さて…今日のコースは…
「シンプルだけど、ここのギアチョイスに悩むな。1速で思い切っきり回すか、2速でロスを減らすか…吉田ならどうする?」
「んー…焦ってホイールスピンもさせたくないですし、ちょっとかったるくなるのを覚悟に2速全開…ですかね。」
「よし、ならそうするか。」
2人で完熟歩行(コースの下見)をしながら、自分で攻めるのをイメージして攻略法を考える。
時々自分の足で走って感覚をつかむことも重要だ。コースの特徴をメモして、試しに一周してみる。実際にクルマに乗らないと細かいことは分からないが、大体の感覚はつかめる。
「よし、大体こんなものかな…先輩、イケそうですかね?」
「まぁ、今回は単純な分腕が問われるな。ピットに戻るぞ。」
ピットに戻ると女子組とタニさんがロードスターをきれいに磨いていた。ボディカラーの赤が太陽に照らされていつもより輝いていた。
「ありがとな。俺の最後のジムカーナを演出してくれて。」
先輩が走り始めた。
実況の人も過去の先輩を見ていただけに寂しそうだった。
その走りは、丁寧かつ、鋭いものだった。
僕には到底マネできない、高次元なものだった。
アタックから帰ってきた先輩はどこか満足げだった…
「5台中3位…表彰台には登れたし、まぁいいかな。」
「お疲れさまでした。練習走行会に行きますよね?」
「いや…吉田、お前と勝負がしたい。運営の方にもやりたいと伝えてOKももらっている。どうする?」
Light The Heart ハイドレン・ラー @Namgem
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