◇12月21日の相川さん。
12月21日、土曜日。
今日はお母さんにたのまれて、京香姉のところに来ていた。実家から送られてきた野菜とかそういうのを届けに来たんだけど、さすがにお米は重い。
「わざわざありがとう。取りに行くっておばさんに言ったんだけど……」
「いいの。こっちに用があったから」
京香姉の住むマンションは二駅先のところにあって、近くにはショッピングモールがある。
昨日、舞ちゃんと駅の近くにある雑貨屋さんを見てきたけど、これってものが見つからなかった。だから、こっちまで足を運んできたって訳。
「買い物?」
「うん。ちょっと、クリスマスプレゼント……買おうかなって」
「そっか。じゃあ、私も一緒に行こうかな」
「ホント? 京香姉とお出掛けするの久し振り!」
「そうね。あ、良かったら夕飯も食べていかない? 今日はナツくんが泊まりに来るから」
相変わらず二人は仲が良いんだな。二人とも一人暮らししてるのに、わざわざ泊まりにくるんだ。
そういえばなつ兄は莉奈ちゃんに負けないくらいのシスコンだったもんね。
「ねぇ、そういえば京香姉って彼氏いたよね」
「え、ああ……実は別れちゃったのよ」
「えっ!?」
うそ。確か、京香姉って高校の頃からその人と付き合ってて、結婚も時間の問題かもってうちの親が言ってたくらいなのに。
「……どうして?」
聞いていいのか分からないけど、私は恐る恐る質問してみた。京香姉は少し困ったように微笑んで、言葉を選ぶように答えたくれた。
「……なんでかな。知りすぎたのかもしれないわね、相手のこと」
「……え?」
「知りたいって気持ちは大事だけど、知りすぎるのは良くないってことよ」
そう言って、京香姉は私の頭をそっと撫でてくれた。優しい手つきと、切なげな笑みを浮かべてる。
そっか。付き合うってことは、別れることもある。人の気持ちは、ずっと同じなんてことないんだから。
「……汐里、好きな人いるんですって?」
「どうして!?」
「ナツくんから聞いた。汐里は、相手のこと好きでいてあげてね」
そして、知りたいって気持ちをなくしちゃダメよって京香姉は言った。
知りたいをなくしちゃダメだって。
なんだか、私には難しいなって思った。でも、忘れちゃいけないと思った。
好きって気持ち、大事にしなきゃ。
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