◆12月21日の青山くん。




 12月21日、土曜日。

 俺は駅にあるファーストフード店で一人、ボーッとしていた。

 飲み物は既に空になっていて、ストローで吸い込んでもズズーッと音がなるだけで何も口に入ってこい。

 窓際のカウンター席、俺の前には食べ終えたハンバーガーの包み紙と少しだけ残ったポテト。それと、プレゼント用の包装がされた小さな包みがひとつ。

 相川へのプレゼント、雑貨屋で見つけたヘアピンが入ってる。可愛い髪飾りの付いたピン止め。周りが女の子ばかりで居心地の悪い中、相川に似合いそうなヤツを選んだつもりだ。



「……気に入ってくれるかな」



 ボソッと呟く。こんなの買ったの初めてだから、何を買えばいいのか全然わかんなかったけど、相川のことを思い浮かべながら必死に考えて選んだ。

 妹か姉でもいれば相談できたんだろうけどな。残念なことに俺は一人っ子。




「あれ? 青山?」



 その声に振り返ると、そこには直木と知らない女性がいた。

 いや、知らなくない。あの人だ。直木先輩の彼女。この二人、仲良いんだ。



「君、前に莉奈のお見舞いに来てくれた子だよね?」

「あ、どうも。青山です」

「私は春待澪だ。よろしく」



 さすがは直木先輩。可愛い人と付き合ってるんだな。羨ましい。

 まぁ、相川だって全然可愛いし。って、俺は誰と張り合ってるんだよ。



「あんた一人なの?」

「……あ、ああ」

「それ、もしかしてプレゼント?」



 直木がテーブルの上にある包みに目を向けた。

 目敏い奴。俺が頷くと、直木はニヤリと笑った。なんだよ、その笑い。



「あのさ、クリスマス会の前にちょっと顔貸しなさいよ」

「は?」

「駅の近くにある公園、あそこで待ってなさい」

「なんでだよ」



 もしかして俺に告白する気か?

 悪いけど、俺には相川が……



「勘違いするんじゃないわよ。私、あんたなんかに欠片も興味ないから」

「ですよねー」



 わかってました。わかってましたとも。

 もしそうだとしたら、天変地異の前触れかと思うぜ。



「いい? 30分前には来なさい。じゃないと後悔するわよ」

「はぁ?」



 直木はそれだけ言って、春待さんの腕を引いて店を出ていった。

 なんだったんだ? アイツ、俺に何の用があるんだよ。本当に訳がわからん。

 あとで芦原に電話でもして聞いてみようかな。




 お前は直木にどんな教育をしてるんだって。






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