◇12月19日の相川さん。





 12月19日、木曜日。

 その日の夜、私は家で雑誌を広げていた。本屋で買ってきた、メンズ向けの雑誌。青山くんに渡すプレゼントの参考になればいいなと思って読んでるんだけど、今のところ目ぼしいものはない。

 まぁ、ちょっと参考にしたいだけで何か買いたいとかそういうんじゃないし。



「……うーん」



 この間の青山くん、やっぱり私服もカッコよかったな。

 私は携帯を開いて、莉奈ちゃんから貰った写メを見た。胸元で光るシルバーのネックレスもカッコいいな。こういうのが好きなのかな?

 そういえば、さっき見た雑誌にもこんな感じのストラップが載っていたような。私はさっきの雑誌をパラパラと捲ってみた。



「あった」



 青山くんが持ってるネックレスに似た、カッコいいストラップ。こういうの、近所の雑貨屋には置いてなかったような気がする。ちょっと遠くまで行かないとダメかな。

 今度の休みに出掛けてみよう。舞ちゃん達、誘ったら付いてきてくれるかな。

 私は青山くんから貰ったストラップを机の引き出しから取り出してみた。これのお返しになるか分かんないけど、喜んでもらえるようなものあげたいな。

 ジッと手の上に乗せたそれを見つめていると、ドアがノックされて返事をする前に戸が開いた。



「おーっす」

「な、なつ兄!?」



 部屋に入ってきたのは、親戚のお兄さん。篁棗お兄ちゃん。確か今は大学生だったはず。



「どうしたの、急に」

「母さんに頼まれて、叔母さんに届け物」

「そうなんだ。京香お姉ちゃんは?」

「仕事。年明けには顔を出すってさ」



 京香お姉ちゃんは、なつ兄のお姉ちゃん。お姉ちゃんは病院か何かで働いてるんだったかな?

 二人はお母さんの兄の子供。小さい頃は私も二人とは兄弟みたいに仲良くしてもらっていたんだよね。懐かしいな。二人が高校生くらいになったころから、年末年始くらいにしか顔を合わさなくなったから、こうして会うのも久し振り。



「どうだ? 学校は。もうそろそろ卒業だろ?」

「うん。大丈夫だよ、もう高校受かってるから」

「そうなのか。お前、結構頭良かったもんな」



 なつ兄が頭をよしよししてくれた。なつ兄のこういうとこ、好きだな。本当に良いお兄ちゃんって感じ。ちょっと口が悪いのがあれなんだけどね。



「ん?」

「え?」



 なつ兄がさっき読んでた雑誌を手に取って、私の方を見た。



「お前、彼氏でも出来たか?」

「ええ!? ち、違うよ!!」

「本当かー? 暫く見ないうちに汐里も女になってたのかー」

「ちょっ! その言い方やめてよ!!」



 もう! なつ兄のこういうところは嫌い!

 なんで私、いつもこういう風にからかわれてばかりなんだろう。



「で、どこまでいったんだ?」




 なつ兄のバカアアア!!






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る