◆12月19日の青山くん。




 12月19日、木曜日。

 俺は夕飯を済ませた後、近所のコンビニへと向かった。適当にジュースやらお菓子やらを買って外に出ると、久しぶりに見る顔と出逢った。



「虎太郎先輩!」

「英司……? 久しぶりだね」



 二年前に卒業した先輩、犬飼虎太郎さん。大柄だけど、メッチャ優しい先輩で、結構お世話になってたんだよな。



「元気してた?」

「はい! 先輩も元気そうで」

「うん。あ、ちょっと待って」



 先輩はコートのポケットから携帯を取り出して、誰かと電話をし出した。誰だろう、彼女かな。ちょっと声が聞こえたけど、女の人っぽかった。

 そういえば、先輩っていつも雨宮先輩と一緒だったな。雨宮先輩はかなり有名で、女王様ってみんなから呼ばれるような人だ。で、虎太郎先輩はその女王様の犬的なポジションだったみたい。

 同じ高校に進学したらしいけど、もしかして付き合ってるのかな。



「ゴメンね、話の途中で」

「いえ、もしかして彼女ですか?」

「え……」



 先輩は顔を赤くして、思いっきり首を振った。なんだ違うのか? でも仲良さそうだったけどな。



「ち、違うよ。凜さんとは、その……恋人とかでは……」

「凜さん……って、雨宮先輩ですよね。中学の時から仲良かったじゃないですか」

「いや……俺は彼女のこと好きだけど……凜さんとは、まだそんな……」



 まだってことは、いつかそういう関係になるってことも?

 なんか、俺の周りってそんなんばかりだな。もう付き合っちゃえばいいのに。



「じゃあ、クリスマスは雨宮先輩と?」

「あ、うん。凜さんが行きたい場所があるみたいで」



 なんか、虎太郎先輩は相変わらず雨宮先輩の言いなりというか……

 まぁ、本人は幸せそうだから良いんだろうけど。



「じゃあ、プレゼントとかも渡すんですか?」

「うん。英司は? 彼女とかいないの?」

「いや……彼女はいないんですけど……その、クリスマスに告白できたらなって……」

「そっか! 頑張ってね、応援してるよ」

「ありがとうございます」

「プレゼントあげるの?」

「はい。彼女、甘いものが好きだって言ってたから、お菓子でもって……」

「へぇ、いいね」

「あと……もう一個、あげたいものがあって……」



 遊園地に行ったとき、相川が付けてたヘアピン。あれが可愛かったから、そういうのプレゼントしたいなって思ってるんだけど。



「うん、いいんじゃないかな。英司が気持ちを込めてあげたものなら、きっと喜んでくれるよ」

「はい」



 先輩にそう言われると、なんか安心できるな。

 今度の休み、探しに行こう。




 可愛いの、あるといいな。





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