◇12月15日の相川さん。





 12月15日、日曜日。

 今日はみんなと新しく出来たばかりの遊園地に行く日。

 舞ちゃんと莉奈ちゃんの家に寄って、二人に髪形をセットしてもらってから待ち合わせの駅へ行くと、もう青山くんたちが来てた。私服の青山くんにドキドキしながらみんなで遊園地へ向かい、絶叫マシンやお化け屋敷、メリーゴーランドなんかに乗った。

 お化け屋敷はみんなで入ったんだけど、青山くんが一番怖がってて、初めて見る表情に私は嬉しくなった。青山くん、怖いの苦手なんだ。可愛いな。

 そして、最後に二人一組になって観覧車に乗った。組み合わせは言うまでもなく、舞ちゃんと佳山君。莉奈ちゃんは芦原君と。

 私は、青山くんと。



「……」

「……」



 私たちに会話はなかった。夕焼け色に染まったゴンドラの中で向かい合い、ただただ空を眺める。

 何、話せばいいんだろう。そんなこと考えながら、ボーっと景色を見てると青山くんがこっちを見ていた。



「……何?」

「あ、いや……」



 何だったんだろう。顔に何か付いていたのかな。

 私が小さく首を傾げると、青山くんが思い出したようにカバンから小説を取り出した。



「相川、これ」

「え? あ、もう読んだの?」

「ああ。ありがとう、面白かった」

「そっか……」



 もう読み終わったんだ。急いで読んでくれたのかな?

 私は自分のカバンに小説をしまった。何か聞いた方が良かったかな。会話、なくなっちゃった。



「……」

「……」



 でも、何でだろう。会話がないのに、沈黙が続いてるのに嫌じゃない。あれだけ何を話そうかって沢山考えていたのに、今はそんなことどうでもよくなっちゃった。

 不思議。こんなに静かなのに、不安とか何もない。



「今日は、楽しかったな」

「私も」

「相川、絶叫得意なんだな」

「青山くんは怖いの苦手なんだね」

「それはもういいって」



 お互いに顔を見合わせて、クスリと笑った。

 なんか、いいな。この感じ。ふわり、優しい雰囲気が心地いい。



「もうすぐ、クリスマスだね……」

「そうだな。今年も、あと半月で終わりか……」

「早いね」

「ああ……」



 もう、12月に入って二週間も経つんだ。早いな。

 毎日があっという間に過ぎていって、きっとクリスマスも直ぐに来ちゃうんだろうな。卒業式も、あっという間。それぞれの進路に向かって、歩き出す。



 そうなる前に、ちゃんと告白して気持ちを伝えないと。




 後悔しないように。






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