◆12月15日の青山くん。






 12月15日、日曜日。

 今日はみんなと新しく出来たばかりの遊園地に来ていた。

 駅でみんなと待ち合わせして、いつもとは違う髪形の相川にドキドキして、一時間半くらい電車に揺られて遊園地に着いた。そして、いくつかアトラクションに乗った。

 絶叫マシンは一通り乗れた。俺と悠季はバカみたいに何回も乗りまくって吐きそうになったのを女子たちに爆笑された。

 そのあと、あんだけ嫌だと言ったのにお化け屋敷に入ることになって俺は相川に超ビビった姿を見られてしまった。

 そして最後に、大観覧車に二人一組で乗ることになった。

 言うまでもなく、組み合わせは芦原と直木、悠季と井塚。そして、俺と相川。



「……」

「……」



 俺らに会話はなかった。俺らを乗せたゴンドラがゆっくりと上に登って、数分。もう何十分も乗っているように感じられるが、下を見下ろしてみてもそれほど高くはない。まだ、まだまだゴンドラは上へ上へと、空に近付いていくかのように、廻る。

 相川は日が沈んでいく茜色の空を眺めている。そんな横顔も可愛くて、俺はついジッと見てしまった。



「……何?」

「あ、いや……」



 見られてるのに気付いた相川が首を傾げて聞いた。

 どうしよう。何か、話さないと。でも、何を話したらいいのか。

 あ、そうだ。本、借りてた小説、返さないと。



「相川、これ」

「え? あ、もう読んだの?」

「ああ。ありがとう、面白かった」

「そっか……」



 ヤバい、会話終わっちゃった。もっと何かあっただろ。面白かったじゃなくてさ、本屋で会ったときみたいに、もっと話したいことが。



「……」

「……」



 なんか、なんだろう。話したいことは沢山あるけど、でも、今はこれでいいような。そんな感じがするのは何でだろう。

 沈黙が、嫌じゃない。たまに目が合うと、相川は小さく微笑んでくれて、俺も自然と笑顔になって。

 空気が、優しく感じる。夕日のせいか?



「今日は、楽しかったな」

「私も」

「相川、絶叫得意なんだな」

「青山くんは怖いの苦手なんだね」

「それはもういいって」



 お互いに顔を見合わせて、吹き出すように笑った。

 なんか、いいな。やっぱり俺、相川のこと好きだな。改めてそう思う。



「もうすぐ、クリスマスだね……」

「そうだな。今年も、あと半月で終わりか……」

「早いね」

「ああ……」



 あっという間に一日一日が過ぎていく。気付けば12月だし、あと二週間もすれば今年も終わって、あと三ヶ月もすれば卒業だ。

 そうしたら、相川と離れてしまう。お互い、それぞれの進路に向かって歩き出す。

 離れたく、ないな。

 だから、告白するんだ。フラれても、相川の心のどっかに俺が残っててくれるだろう。



 少しでも、少しでも。




 君と共にいたい。




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