◆12月12日の青山くん。




「あ」

「あら」



 12月12日、木曜日。

 俺、なんかピンチです。今日は早く登校すると、玄関で直木に出くわした訳なんだけど、なんでかメッチャ睨まれてるんです。俺、何かしましたか。だったらごめんなさい。理由はわからないけど謝ります。



「あ、あの……」

「これのどこがいいのかしら」



 なんか失礼なこと言われなかったか。言われたよな、確実にバカにされたよな。



「何だよ……俺、教室行きたいんだけど」

「そう。奇遇ね、私もよ」

「じゃあ退いてくんね?」

「その前に、聞いておきたいことがあるんだけど」



 なんだ?

 俺は首を少し傾げ、何の用か訊いた。



「あんた、今までに付き合った子とかいる?」

「は?」

「いいから」

「い、いないけど……」

「そう。好きな子は?」

「……なんでそれをお前に言わなきゃいけないんだ」

「いたのね。まぁ、そんなことはどうでもいいんだけど」



 どうでもいいなら聞くなよ。



「青山って」

「……なに」

「好きな子にはどうするタイプ?」

「はぁ?」



 さっきから何なんだ、コイツ。なんでそんなこと聞いてくるんだよ。全然わかんねーし。



「どうって、何がだよ」

「尽くすとか、尽くされたいとか。あれがしたいこれがしたって、欲望があるでしょうよ」

「よ、よよよ!?」

「なに気持ち悪い反応してるのよ」

「き……」



 気持ち悪いって、変なこと言ったのはそっちだろ。何、俺が悪いの? 何もかも俺が悪いんですか。そんな汚い雑巾でも触るかのような目で俺を見ないでくださいよ。傷付くんですけど。

 なんか、最近は変なことばかりだな。昨日の二人といい、直木といい。一体何があったんだよ。何がお前らを変えたんだよ。



「まぁいいわ。とりあえず害はなさそうだしね」

「何だよ、害って」

「別に。一応どんな奴は知っておきたかっただけ」



 意味わかんない奴。なんで今更俺のこと知る必要があるんだよ。

 あ、あれか。芦原と仲が良いからか? コイツ、独占欲とか強そうなタイプだもんな。友達にまでヤキモチとか妬くのか。面倒な女だな。芦原、コイツのどこが良かったんだろう。って、そういう言い方は失礼だよな。



「ちょっと、なんか失礼なこと考えてない?」

「ごめんなさい」



 ヤバい、顔に出たか。

 反射的に謝ると、直木が思いっきり俺の足を踏みやがった。



「っ!! いってえな!!」

「バーカ」




 本当に訳のわかんねー女!

 あとで芦原に文句言ってやる!!





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る