◆12月11日の青山くん。





 12月11日、水曜日。

 放課後、俺は芦原達と本屋に来てた。今度行くテーマパークのガイドブックを買いに来た訳だけど、わざわざ用意する必要があるんだろうか。どうせ向こうでパンフレットとか貰うんだし、いらないとは思うんだけどな。

 そう言うと、二人は少し厳しい顔をした。



「……色々と準備がいるんだよ」

「何の準備だよ」

「いいから。広くて混むんだから、前もって色々と調べておいた方が良いだろ?」

「まぁ、そうだけどさ」



 何なんだ、どうしたんだこの二人。

 なんか無駄に緊迫した雰囲気があるというか、ガイドブックを見る目が真剣過ぎる。遊びに行くのにそんなマジになる必要があるのか?

 いや、ないよな。うん、多分ないと思う。



「あ、ジェットコースター乗りたい」

「ああ、そうだな」

「また今度な」

「なんでだよ」

「そんなことより、道順とか覚えておかないと」

「パレードは何時からだ?」



 だから真剣過ぎるんだって。怖いんだって。

 普通にアトラクションとかそういうの見ればいいのに、こいつらはマップをガン見して道順がどうとか、どこが混むからこう回った方が良いとか念密な計画を立ててる。



 このやる気は何だ。何があるんだ。

「お前らさ、何なの。何かあるの?」

「英司、お前も真面目に考えろよ」

「お前はちゃんとマップを把握しろ。いいか、日曜日までには完璧に覚えろよ」

「は?」

「いいから」

「覚えろ」



 これから戦場にでも向かうかのような気迫を二人から感じるのは何でだ。俺は大人しく遊園地のマップを覚えることに専念した。

 どうしてこうなった。こいつら、何か俺に隠してるだろ。じゃなかったら、遊園地に行くだけでこんな真面目に計画たてたりしないだろ。

 でも、何があるっていうんだ? 何があればこんな風になる?

 ダメだ、わからん。



「なぁ、日曜に何かあるのか?」

「……何かって?」



 芦原が睨むような眼で俺を見た。いや、なんでそんな目で見られないといけないんですか。俺、何もしてませんよ。



「な、何かって……なんか様子が変だから……」

「……」

「……」



 二人は顔を見合わせてから俺のことを見た。



「お前は、とりあえず覚悟だけしておけ」

「は?」

「青山。これはお前にとって大事なことだ。気を引き締めてこい」




 益々わからん。

 何があるんだ?





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る