◆12月8日の青山くん。





 12月8日、日曜日。

 今日は特に予定はない。どうしようかな、どっか出掛けるか。どこ行こう。プレゼントはもう買ったし、誰か誘ってゲーセンとか行こうかな。

 俺はベッドに寝転がりながら、俺は友達に声を掛けていった。



「……ッチ」



 みんな用事があるとか言ってきた。悠季も芦原も今日はダメだと。

 なんだ、もしかしてデートか? デートなのか? それだったら俺、激おこなんですけど。



「仕方ねーな、適当にブラつくか」



 俺は携帯と財布を持って、外に出た。

 どこ行くかな。駅前を歩いていると、本屋の雑誌コーナーで相川の姿を見つけた。




「相川」

「え?」



 思わず声に出た言葉が相川に聞こえたようで、彼女は弾かれるように雑誌から目を離して俺を見た。

 私服姿って初めて見た。ヤッベ、可愛いな。



「あ、青山くん……どうしたの、こんなところで……」

「いや、ヒマだったから適当にブラついていたんだけど……そういう相川は?」

「私は本を買いに……今日が発売日だったから」



 そう言う相川の手にはラノベが二冊ある。

 一つは俺の知らないタイトルだけど、もう一個は知ってる。マイナーだけど、メチャクチャ面白いんだよな。もしかして相川も好きなのか?



「それ、相川も好きなんだ? ”四畳半で黒猫と暮らし始めた盲目の魔法使い”」

「え? 青山くん、知ってるの?」

「ああ。そっか、そういえば今日だったっけ、新刊出たの」

「うん……あ、じゃあこれは知ってる? 同じ作者さんのものなんだけど」



 そう言って見せてくれたのは、もう一冊の本。



「いや、それも新刊?」

「うん、読み切りなんだって。入荷数が少ないらしくて、これが最後の一冊だったの」

「マジ? うわー、俺も読みたかったな」



 そういえば、短編集みたいなの出すってサイトに書いてあったけ。クリスマスのことばかり考えてたから忘れていたよ。

 仕方ないな、通販で取り寄せるか。



「……良かったら、貸そうか?」

「え?」

「その、明日学校に持っていくから。青山くんも早く読みたいでしょ?」

「マジ? 嬉しい、ありがとう!」



 嬉しい。小説を貸してもらえるのも嬉しいけど、相川とこうして本の貸し借りできるのが嬉しい。凄い嬉しい。

 なんか、ただのクラスメイトから仲の良い友達にランクアップしてないか? 俺もリア充への階段を一歩上がってるんじゃないか?



「あ、じゃあさ。お礼に何か奢るよ。と言っても、ハンバーガーくらいしか出せないけど」

「え、いいよ。そんな……」

「いいから、いいから。あ、それとも何か用事ある?」

「ないけど……」

「じゃあ決まり。行こう」



 俺はレジで会計を済ませた相川と一緒に駅中にあるファーストフード店に入った。

 これ、傍から見たら恋人同士に見えるんじゃないか?




 なんか半ば強引に誘っちゃったけど、大丈夫かな。



 俺の心臓、保つかな……





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