◇12月5日の相川さん。
12月5日、木曜日。
朝の冷たい空気に身を震わせながら、私は通学路をとぼとぼ歩く。早く暖房の効いた教室に入りたい。
学校に着き、校門を潜って玄関で靴を履きかえていると、眠そうな顔をした芦原君が来た。
「おはよう、芦原君」
「……ん、はよ」
芦原君は口元をマフラーで覆ったまま、欠伸をした。
あれ、そういえば今日は莉奈ちゃんは一緒じゃないのかな。
「今日は莉奈ちゃんは一緒じゃないの?」
「莉奈は風邪引いて休み」
「え!? 昨日は元気そうだったのに」
「昨日は夜更かししてたらしい。何してたんか知らねーけど……」
あれかな、芦原君へのクリスマスプレゼントのこと考えてたとかかな。それか、お兄さんへのプレゼント。
それにしても大丈夫かな。心配だな。でも、昨日までまともに話をしたこともなかった私がお見舞いに行っても迷惑だよね。
「芦原君、最近莉奈ちゃんのこと名前で呼んでるよね。莉奈ちゃんも芦原君のこと名前で呼んでたし」
「あれ、二人って仲良かったっけ?」
「昨日、駅中の雑貨屋で会ったの。お兄さんの彼女さんと一緒にいたよ」
「ああ、澪さんか」
「芦原君も知ってるんだ。二人は幼なじみなんだよね」
「ああ」
「その、付き合ってるの? 二人って」
「……よく言われるけど、そう見えるのか?」
「最近は特に」
そう言うと、芦原君は何だか複雑そうな表情を浮かべた。でも、ちょっと頬が赤くなった気がする。照れてるのかな。芦原君ってあまり表情が変わらないけど、こういう話題には照れたりするのね。
「付き合ってはない」
「そうなんだ」
莉奈ちゃんの方は芦原君を意識してるようにも見えるんだけどな。芦原君も、莉奈ちゃんのこと好きだったりするのかな。いつも莉奈ちゃんのこと見てたし、多分そうだと思うんだけど。
あれかな、時間の問題って感じなのかな。私の周り、そういう関係の人多いな。舞ちゃんといい、莉奈ちゃんといい。なんだか羨ましいな。私も頑張って告白しないと、そういうキッケカすら作れないもんね。
お願いサンタさん、私に勇気をプレゼントしてください。
「何してんの?」
「ちょっと神頼み……じゃなかった、サンタ頼み」
「は?」
私が両手を合わせて祈る仕草をすると、芦原君が眉間にちょこっと皺を寄せて聞いてきた。むしろ、芦原君に祈った方が効果あるかしら。そのリア充オーラに肖りたいんですけど。
「俺に手を合わせても何もないぞ」
「まぁ一応。藁にも縋りたい気分なので」
「……何があったんだよ」
ほんのり切羽詰ってきたんです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます