◆12月5日の青山くん。




 12月5日、木曜日。

 くっそ寒い中、学校へと向かって歩いていると、目の前に悠季の後ろ姿を見つけた。あのくそリア充め。



「悠季」

「……ん? ああ、英司か」

「英司か、じゃねーよ。この裏切り者め」

「まだ言うか、お前は。言っただろ、付き合ってる訳じゃないんだって」

「うるせーよ。俺に内緒で告白なんてしやがって」

「なんでお前の許可がいるんだ」



 確かにその通りだけど、なんか悔しいじゃないか。俺はまだ告白できてないのに先を越されるなんて。

 フラれたみたいなこと言ってたけど、クリスマスにイルミネーション見に行くとかどう見てもカップルじゃん。あれだろ、時間の問題みたいなヤツなんだろ。知ってるぞ、俺は。

 何なんだ、芦原といい悠季といい。どいつもこいつもリア充しやがって。



「お前は井塚にプレゼントとか渡すのか?」

「……一応」

「何あげるんだよ」

「本、かな。初版を予約してあるから、それを」

「クリスマスプレゼントで本!?」

「前から欲しいって言ってたから」

「あっそ……まぁ、欲しがってたものなら喜ぶだろうな」



 あ、そういえば。俺、井塚に悠季がなにを欲しがってるのか聞いてくれって頼まれてたっけ。

 さりげなく、井塚に頼まれたってことを悟られないように。



「なぁ、お前はクリスマスに何欲しいんだ?」

「俺?」

「まさかお前も本が欲しいとか?」

「いや……そうだな、俺だったら冬だしマフラーとか手袋とか?」

「ベタなもの欲しがるのな」

「今年まだ買ってないんだよ。さすがにもう寒いから欲しいんだよな」

「買えよ、それくらい」

「わかってるよ。でも本予約したら金なくて……」

「そんなに高かったのか?」

「いや、それ以外にも色々買っちゃってさ。今月はもう小遣いないんだよ」



 来年のお年玉を貰うまでは何も出来ないと悠季は肩を落として言った。コイツ、そんなに本とか読むタイプだったっけ?

 てか、井塚に影響されたんだろうな。コイツ、井塚に会うためにしょっちゅう図書室に通い詰めていたし。一途だよな、本当に。

 とりあえず、コイツの欲しいものは聞けたからいいか。



「英司はどうなんだよ」

「俺? 俺は貰えれば何でもいい」

「……食べ掛けでもか?」

「極端すぎないか?」

「じゃあ百均のお菓子とか?」

「貰えるなら、まぁ」



 それを相川がくれるってんなら喜んでもらうさ。この際、食べ掛けでも喜んでもらうさ。まぁ、相川はそんなことする子じゃないけど。



「安いな、お前」

「じゃあ、お前は井塚さんから何貰ったら嬉しいよ」

「……」

「お前だって何貰っても喜ぶんだろ」

「うっせ」




 単純だな、俺らって。





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