◇12月4日の相川さん。
12月4日、水曜日。
放課後になり、私は一旦家に帰ってから近所の雑貨屋さんに向かった。ここならメンズのアクセサリーも置いてあるし、値段とか見ておきたい。
駅中にある雑貨屋に入り、メンズアクセサリーの置いてあるコーナーを見た。
数はあまりないけど、結構カッコいいの多いな。あ、これとか青山くんに似合いそう。こっちもいいな。
「……千円ちょっとかぁ。買えないこともないけど、あまり高いと貰う方も気を遣うよね」
「それくらいなら平気じゃないの?」
「きゃあ!」
思わず声を出してしまい、反射的に隣を見たら同じクラスの直木莉奈ちゃんがいた。こんなところで何してるんだろう。制服ってことは、学校からそのままここに来たってことだよね。
「静かにしなさいよ。他の人に迷惑でしょ」
「ご、ごめんなさい。あの、莉奈ちゃんは何でここに?」
「来ちゃいけなかった?」
「う、ううん! えっと、一人?」
「違うわよ」
莉奈ちゃんは目の前のアクセサリーを手に取りながら話してる。誰と来たんだろう、芦原くんかな。いつも一緒だし。
そういえば、莉奈ちゃんのお兄さんってスゴいカッコよくてモテてたんだよね。莉奈ちゃんもお兄さんのこと大好きだったし。
「ね、お兄さんにプレゼントあげるの?」
「あげるよ。家族なんだから当たり前でしょ?」
「そ、そうだよね。あのさ、どんなものあげるの?」
「そうねぇ……あの人が何をあげるのかによるわ」
「あの人?」
私が首を傾げると、離れた場所から高校の制服を着た女性がこっちへと向かってきた。あの人が莉奈ちゃんと一緒に来た人かな。
その人は莉奈ちゃんと一緒にいる私に気付くと、少し申し訳なさそうな顔をした。
「ああ、すまない。友達も一緒だったのか?」
「え? あ、いえ。私はたまたまここで会っただけなので……!」
「この子はクラスメイト。気にしなくていいよ」
莉奈ちゃんは手に持っていたアクセサリーを置いて、高校生の腕をそっと持った。
「えっと……?」
「この人はお兄ちゃんの彼女。春待澪さん」
「え、ええ!? 直木先輩の……?」
そっか、あれだけカッコいいんだから彼女がいてもおかしくないよね。
でも、莉奈ちゃんって物凄いブラコンで有名なのに、お兄さんの彼女と仲良くしてるなんて意外。
「はじめまして」
「あ、相川汐里です」
彼女さん、なんだか物静かというか可愛らしい印象なのにクールでカッコいい感じ。
莉奈ちゃんは春待さんの腕に抱き着いて、なんか話してる。あれかな、お兄さんの彼女ってことは自分のお姉さんになる訳だから、嫉妬とかそういうのはないのかな。
そもそも、ブラコンとかって彼女に嫉妬とかまでするのかな?
「ところでさ、相川は誰かのプレゼントでも買いに来たの?」
「え? な、なんで!?」
「だって私にプレゼント買いに来たのか聞いてきたじゃない」
「……そう、だけど」
「彼氏いたの?」
「ち、ちがうよ!?」
「あっそ」
莉奈ちゃんは興味なさそうな顔してる。莉奈ちゃんはすぐ顔に出るから分かりやすいな。普段ツンケンしてるけど、そういうとこがあるから嫌いじゃない。
「えっと……良かったら相談に乗ってもらえないかな。私、異性の人にプレゼントって渡したことなくて……その、彼女さんにも聞いていいですか?」
「申し訳ないが、私もそういった経験がないんだ。莉奈、君なら毎年理生君にプレゼントあげていたんだし、何かアドバイスが出来るんじゃないか?」
「私が?」
ちょっとめんどくさそうな顔をしながら、莉奈ちゃんはちょっと考える仕草をした。それにしても、彼女さんは変わった喋り方をするんだな。
「普通に相手が貰って喜ぶものでもあげればいいんじゃない?」
「まぁ、それはそうなんだけど……」
「要は気持ちの問題でしょ。安かろうと何だろうと、大事なのはあげる側の想いよ」
「……想い……」
「ところで、誰にあげるの?」
「え!?」
「透哉?」
「透哉? あ、ああ。芦原くんか。違うよ」
「ならいいわ。そういえば、クリスマス会のプレゼントってどうするの?」
莉奈ちゃん、芦原君のこと好きなのかな。幼なじみでいつも一緒にいるけど、付き合ってるとか? だからお兄さんに彼女が出来ても平気なのかな。
私は二人とプレゼントの話をして、店から出た。莉奈ちゃんとこうして話をするの、初めてかもしれない。なんか嬉しいな、前からちゃんと話をしてみたいって思ってたから。
プレゼント、もうちょっと考えてみよう。
青山くんが喜んでくれそうなもの、買いたいから。
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