◆12月4日の青山くん。




 12月4日、水曜日。

 放課後、俺は本屋に寄って、いつもは通りかかることもしない女性向け雑誌のコーナーで立ち読みをしていた。

 さすがに恥ずかしくて知り合いがいないかどうか何度も周りをキョロキョロしすぎたせいで危うく万引きしてるんじゃないかと思われるところだった。

 相川へのプレゼントにお菓子を買うって決めたはいいけど何を買えばいいか分からない。だからこうして女性誌を読んで研究でもしようと思った訳だけど。



「……」



 なんていうか、女ってよく分かんないな。

 モデルの子は可愛いと思うけど、みんな同じように見えてしまうのは何でだろう。似たような顔に似たような服ばっかり。

 まぁそんなのはどうでもいい。どっかにそういう特集とか載ってないかな。



「ゲッ……」



 俺は思わず声を出してしまった。

 だって、彼氏から貰いたいプレゼントとかいう特集があったけど、どれもこれも無駄に高いモノばかり。香水とかバッグとか、中学生には手の届かないモノばっかりだ。

 これじゃあダメだ。お菓子、お菓子とかそういうのでいいんだよ。



「……っ」



 俺は出かかった言葉を呑みこんだ。

 お菓子もあったよ。でも、やっぱり高いんだよ。なに、クッキーで千円とか。しかも売ってる場所も遠いし。

 ダメだ。ダメダメダメ。雑誌に載ってるようなものはダメだ。こんな貢物みたいなもの、買えるかっていうんだよ。

 でも、どうしようかな。やっぱ、デパートとかで見て選ぶのが一番かな。



「青山くん、何してるの?」

「うわぁ!!」



 急に声を掛けられ、思いっきり大きな声を出してしまった。周りの客や店員にメッチャ睨まれた。恥ずかしい。



「……って、井塚?」

「……なんでみんな私が声を掛けたら驚くのかしら?」

「は?」

「こっちの話。それより、青山くんってこういうの読むのね?」

「え、ああ!? 違う違う」



 俺は持ってた雑誌を棚に戻し、井塚の背中を押して店を出た。



「何よ、急に」

「うっせ。それより、俺があんな雑誌見てたの誰にも言わないでくれよ?」

「なんで?」

「何でもだ!」

「……じゃあ、私のお願い聞いてくれる?」



 井塚はニコッと笑って言った。

 あれ、井塚ってこんなキャラだったっけ? もっとこう文学少女的な感じだと思ってたんだけど。



「なに、お願いって」

「大したことじゃないわ。青山くん、佳山くんと仲良かったよね?」

「……まぁ」

「じゃあさ、佳山くんにクリスマスプレゼント何が欲しいか聞いておいてくれない?」

「は?」



 え、どういうこと? 悠季と井塚、いつの間に付き合ってたの? 今まで仲間だと思ってたのに、いつの間にアイツは俺を裏切った?



「あ、私に頼まれたとか言わないでよ? さりげなくよ、さりげなく」

「……は、はぁ」

「それじゃあ、お願いね」



 井塚は軽く手を振って去っていった。




「……」




 俺は携帯を出して電話を掛けた。


 佳山くん、僕は君に訊きたいことが沢山あります。

 とりあえず、リア充は爆ぜてください。話はそれからだ。





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