◆12月2日の青山くん。





 12月2日、月曜日。

 いつものように登校した俺は、真ん中の席にいる相川を見つけた。友達と楽しげに話してる彼女の後ろを通り、自分の席に向かうついでに声を掛けた。そういう風に見えるように振る舞った。



「おはよう、相川」

「お、おはよう。青山くん」



 よし。いつも通り、いつも通り挨拶できた。そのまま窓際の一番前にある自分の席に座り、俺は誰にも聞こえないように小さく溜め息を吐いた。

 緊張した。いつも以上に緊張したかもしんない。告白するって決めたせいか、こんな日常的なやり取りでも無駄に緊張してしまう。

 俺、25日まで心臓保つかな。毎日こんな調子じゃ、そのうちぶっ倒れる気がする。



「……はぁ」

「何ため息吐いてんだよ」



 なんだ急に。声がした方を向くと、クラスメイトの芦原透哉がいた。



「……なぁ芦原、お前はクリスマスどうすんの?」

「は? いきなりだな」

「いや、聞いてみただけ。お前もクリスマス会に参加するだろ?」

「まぁな。莉奈が行けってうるさいから」

「莉奈? 直木莉奈のことか?」

「ああ」

「……お前ら、前まで苗字で呼び合ってなかったか?」



 いつの間にそんな仲になったんだ。確かにお前らは幼なじみで、よく一緒にいるのは見たことあるけどさ。

 コイツに訊いたのは間違いだったな。コイツがクリスマス前だからって誰に告白しようとかそんな悩みを持つわけがないんだ。イケメン滅びれろ。



「大体、クリスマス会って言っても適当に集まってダベるだけだろ?」

「お前な……みんなで集まって思い出作ろうみたいなこと考えらんないのか?」

「あんま興味ないな。俺はただ莉奈が孤立したくないからって言うから付いていくだけだし」

「……直木、女友達少ないもんな」



 あの性格だから無理もない。でも直木は参加しなさそうに思えたんだけどな、ちょっと意外だ。直木でもクリスマスは浮かれたくもなるんだろうか。さすがクリスマスだ。俺もそんなクリスマスムードに浮かれてる一人。お前の気持ちが分からなくもないぞ。

 ただ、浮かれてるだけじゃ告白は出来ない。それに、相川に渡すプレゼントも決めないと。女の子って何を貰ったら嬉しいんだろう。

 あ、でもプレゼント渡しても平気かな。フラれたら返されそうじゃないか? その辺も考えて買わないとだよな。



「芦原」

「なんだ?」

「お前は直木にクリスマスプレゼントとか渡すのか?」

「一応。クリスマス会のあとに、アイツんちでパーティーするんだってさ」

「直木の家で!? なに、お前らって親公認?」

「勘違いしてるみたいだけど、俺ら付き合ってないから。ただ俺んちの親、クリスマスも仕事で帰ってこないから、アイツのお兄さんが気を遣って呼んでくれたんだよ」

「へー……」



 なんだ、付き合ってないのかよ。幼なじみって紛らわしいな。



「じゃあさ、何買うんだ?」

「当日にアイツと一緒に買いに行く」

「は?」

「気に入らないモノ買うと文句言うからな」





 ダメだ、コイツは参考にならない。





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