陰と陽のように全ては一対で、幸と不幸はその見る角度で姿を変え、与えられるのは神罰なのか祝福なのか。
男児を神に捧げてその苦難を乗り越えようとする村の、幼い姉弟。弟を庇って姉は神にささげられる事を選び取るのですが、その愛情を伴う行動が運命を動かし始めます。
アオバと名乗った健気な少女の生きる姿を綴った物語で、彼女が得るものは悲劇なのか幸福なのか。
長く姫神に仕える男性アタリ、少女アオバ、そして姫神。三者三様に相手を思いやり、選択をしたその結果。
そこはかとない哀しさが根底に横たわりつつも美しい、愛のある風景の物語を見届けて欲しいです。
旱魃に苦しむ小さな村で、親を喪い寄り添うように生きて来た双子の姉弟は、山神さまへの「使い」を頼まれた。姉は弟の青葉をかばい、男児となって山へ赴く。人里とは時間の流れ方の違う山神の宮で、彼女は一人の男性と出会う。アタリという名の男性は、かつて山神さまの許へ送られた子どもだったが――
◇
弟を想う「ぼく」や、山神さまに仕えるアタリの心情、山の風景などが、丁寧に描かれた作品です。孤独な女神を労わる少女の気持ちが沁みるように美しい。人界の営みと神々の暮らす異界とは、隔てがありますが、そこを超えて行き来する親子・兄弟の在り方は素敵だと感じました。
個人的には、烏天狗がお気に入りです。
陰惨さのない和風ファンタジーです。