第18話:相棒・???との邂逅

 ──そう。

あのドラゴンだ。

ファンタジー系の物語定番の最強モンスター。

 天をつくかの如き巨体に、宙を煌めく雪のような白色の体色。

 そのまなこは澄み切った空色で、二足歩行の西洋竜ではなく、細長い身体を持つ東洋龍だ。

 龍は俺の前方、僅か数百メートルの場所で、とぐろを巻きながらくつろいでいた。……ここから見ているだけでも威圧感が半端ない。

 驚愕や混乱で思わずジッと見つめていると、くだんの龍がゆっくりと、おもむろに目を覚ました。


 「…………んっ、んん……あ、れ? ……誰……だい?」


 お、おぉー! ……し、喋ったぁー……。

 ま、まあラノベでも上位の龍は人化とか人語を喋ることあるからな……。

 ……もう、そうやって納得しておかないとやってけねぇよ。

 ……この龍はもう、雰囲気と見た目からして絶対に強いヤバい龍だと思うし……。

 ──俺の耳朶を叩いたその声音は、例えるならクールな女の子みたいな爽やかな感じだ。……女性? それとも龍だから雌? 

 ──しかし、見た目からも分かる通り、声がとても大きい。

 龍が発声した瞬間、大気が大きく震えて思わず身体が後退しそうになったほどだ。

 ……うつむいていた龍がゆっくりと此方こちらを見つめながら、徐々に焦点を合わしていく。


 「……ん、ん? ……え、ええっ!? に、人間!? な、何でここに居るんだい!? 身体は!? だ、大丈夫!?」


 ─────ブワアアアアアッ!!!


 「うぉあっ!?」

 「あ、ご、ごめん!」


 目が覚めた瞬間に龍が突然、大声でまくし立ててきたため、大規模な突風が発生、……ガチで吹っ飛ばされそうになる。


 「い、いえ、大丈夫です。ただ、できればもう少し声を鎮めてくれるとうれしいかもしれないです……」

 「あ、う、うん。ごめんね? でも、ビックリしちゃってさ……。起きた瞬間に目の前に普通の人間が居るなんてね……。そりゃあビックリするよ。しかも平気そうだし。……まあ、その様子を見る限り大丈夫なようだけど……」


 え……? なんか俺、そんなにヤバい状態なの……?

 龍の心配そうな、相手をいたわるような様子に、逆に自分の身が心配になってくるんだけど……。

 少し焦りながらも野球でつちかった礼節を忘れずに、恐る恐る龍へと声を掛ける。


 「あのー、俺ってなんかそんなにヤバい状態なんですか……?」

 「……え? う、うん。本当なら不味い状態になるはずなんだけど……。キミはどうやら大丈夫なようだね」


 どうやら俺なら大丈夫なようで、今のところホッとした。


 「ちなみに、俺以外だったら具体的にどんな不味い状態になるかもしれなかったんですか……?」

 「えっとねー、ボクの総身から溢れ出た膨大な魔力と大気中にある大量の魔素を勝手に身体が自然吸収しちゃって、最悪死んじゃうって可能性もあったねー、うん」

 「……ま、マジすか……」


 あ、あっぶねぇ……。何故か分かんないけど、それに耐えられる身体でよかったわ……。

 ……そこでふと、あることに俺は気づいた。最初のまくし立てた所のインパクトが強すぎて忘れていたが───まず俺の目の前に現実世界ではありえないかつ、かの伝説の龍がいるということ。そして初対面なのに普通に会話しているということ、だ(しかも自己紹介もしてない)。

 何やら考え込んでいるところ悪いが、一応気になることなので声を掛ける。


 「あ、あのー……。失礼ですが、あなたはドラゴン、ですよね……?」

 「……? あーうん、もちろんそうだよ。ボクは正真正銘のドラゴンさ。──あと、その敬語はいらないかな。そういう堅いのはボク好みじゃないんだ。」

 「……えっ、いいんですか……?」

 「うん、もちろんさ。──キミのこともすごく気になるからね」

 「じ、じゃあ遠慮なく。……俺も君のことが物凄く気になるからな」


 なんたってあの伝説の龍だ。ラノベ好きだったら誰もがそうであろう。むしろ気にならない方がおかしい。

 そこでふと、今気づいたかのように龍が楽しそうに話し掛けてきた。


 「……あっ、そうだ! 自己紹介がまだだったよね。ゴホンッ、ボクは元、星の秩序を守護せし者コスモ・ガーディアン、序列一位の天龍てんりゅう・ルカリオンっていうんだ。──よろしくね?」


 ──これが俺とルカの運命はじめての出会いだった。

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龍の継承者~世界最強を受け継ぎし少年、異世界を自由に無双する~ 田仲らんが @garakota

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