第16話:因縁の決着byソードタイガー・亜種

 俺は見慣れた──いや、もう見慣れすぎたトンネルを緊張した面持ちで歩いて行く。

 ……ふぅー……。滅茶苦茶緊張する……。

 でも、あのペインスティンガー・スコーピオンを一発でやったんだ。大丈夫大丈夫。

 ───ソードタイガーのエリアに到着。

 エリア内を見ると、中心で|鼾(いびき)をかきながら寝ていた。

 ……チャンスだ。

 俺は怖くてポケットに入れられなかった先程の毒針──白毒の死針デッドリー・ニードルをソードタイガー目掛け投擲。


 「ギャンッ!」

 「──よし」


 見事命中。しかも毒針だ、持続効果もある。


 「ガァルルルルルルルッ!!!!」

 「おぉー、こっわ。」


 どうやらソードタイガーさんは針を打たれてご立腹のようです。当たり前か。

 先程の緊張は何処いずこへ。銭湯に入った瞬間、気分が高揚して視界が広がる。

 俺は油断なく大鉈を正眼に構え、《存在強化》を発動。

 武器へと『破壞力ディストラ』を纏わせる。

 万全の準備を整え、ソードタイガーの攻撃に備えた。

 ソードタイガーは警戒してるのか「ガルルゥ…」と、怨嗟の籠もった眼を此方へ向けながらゆらりゆらりと俺の周りを徘徊している。

 すると三周ほど回った時、なんの前ぶりもなくソードタイガーの回りから三振りの黄金の剣が顕現。

 ソードタイガーの回りをグルグルと回転している。

 例えるならそうだな……。『ポケ〇ン』の『つるぎの〇い』みたいな感じだ。

 ……いやな予感がする……。

 そしてソードタイガーが歩みを止めた刹那、咆哮と共に周囲の黄金剣が此方に殺到してきた!


 「ガウッ!」

 「だと思ったよ!」


 三振りの内、先行して飛来してきた一振りを大鉈で叩き落とし、残りの二振りは全力で疾走することで回避。

 そのまま洞窟の壁へ激突───消失。


 「へっ! 高校球児、舐めんなよ!」


 野球でバッティングは得意だった方なので上手く打ち落とせた。

 呼吸を整え、油断なく構えながらソードタイガーの方を見やると、何故か荒い息を吐きながら苦しそうにグルグルと唸っている。

 ……ああ! 毒が回ってきたのか! 自分でやったのに忘れてたわ……。バカがバレちまう……。

 ──チャンスだ。ここで一気に決める。

 まず、『破壞力』を纏わせたボールを投擲。直後───うざったそうに前爪で叩き落とされる──刹那に高速疾走。

 ボールが前足で払われた瞬間を狙い、それに重ねるように毒針を投擲───命中。


 「ガルルゥ!?」

 「はっ、この間抜けが!」


 ボールはデコイだっつーの。

 ソードタイガーが怯んでいるうちにも疾走を続け、一気に間合いを詰めて懐へ肉薄。


 「……ガルゥ?」

 「──遅ぇよ」


 ソードタイガーが一拍遅れて気付く。が、もう遅い。此方はもう準備が出来てる。

 スキル発動──────


 「──“破壞の一撃バースト・ヴロウ”──」


 ────ソードタイガーの顔部目掛け、神速で振り抜いた。


 ブウゥゥン────ドッパァァァァンッ!!!!


 大鉈は唸りを上げながらソードタイガー頭部へ吸い込まれるかのように完全命中クリーンヒット

 今までで一番の破裂音が大気へ轟く。

 絶命したソードタイガーが光の粒子となり、宙へと舞いながら消失。

 俺は声を上げさせるまでもなく、文字通り一撃で勝負を決めたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る