第10話:オーク・キング・亜種

 ──〔ステータス〕──

 [名称]なし

 [種族]オーク・キング(亜種)

 [レベル]458

 [スキル]怒力Ⅸ・柔軟脂肪Ⅷ・性欲Ⅹ・自動再生Ⅴ


 「……………」


 俺は、もう、諦めた。

 だって………。いや、もうなんとも言えねぇよ……。

 体長はソード・タイガーと同じくらい。総身が毒々しい黒紫色で、所々白色の斑点がある。

 紅色のまなこが妖しく揺らめき、「ハァ…ハァ…」と、荒い呼吸を繰り返している。滅茶苦茶キモいです。

 手には無骨で巨大な大鉈を持ち、身体には今にも千切れそうな一枚の簡素な布服を纏っている。

 威圧感はカマキリ野郎より圧倒的だ。やはり人型というのもあると思うが。

 ていうか、あいつのスキル《性欲》が一番強いって(笑)。オークといえば定番か。

 それはさておき、豚王あいつを倒す作戦を早急に考えなければ。

 ふ、ふふふっ……。俺の口から自然と笑みが溢れる。豚王あいつのレベルは先程のカマキリ野郎の約二倍だ。

 マイバットの活躍場所がやっと来たかもしれんッ! 今まで一度も使ってないからなぁ。……ククッ。

 今回は魔物から食料があまりにもドロップしなさすぎて溜まっているこの暗澹とした鬱憤を、マイバットによって悉く晴らしてやろう。ク、ククッ……アーハッハッハー!


 閑話休題。


 妄言はさておき、ふむ。どうするか………。……まあ、いつも通りでいっか。どうせ一発だろ。

 その考えが後に災いへと繋がるとは想いもしないまま、いつも通りのプロセスを踏み─────投げる。


 シュルルッ─────────ズパァァァァン!!!


 ナイスコントロール。自画自賛だ。風船を割ったような破裂音。

 高速で腹部へと命中し、そのまま貫き勢いよく穿った。

 穿たれた腹部から大量の鮮血が舞い、口から吐瀉物が吐き出された。


 「んだよ。まぁた一発かよ~………。ま、分かってたけどねー……」


 いつも通りの光景。また一発だ。“破壞の死球デッドボール”強過ぎ。

 そう。そこまでは、いつも通り、だった。


 「……えっ?」


 突然、後方から得体の知れない何かを感知。背筋にヒンヤリとした怖気が走った。


 動揺を隠すように後方へ瞬時に振り返るとそこには────


  ────死んだはずの豚王が、静かに、佇んでいた。


 死んだかと、思っていた。


 しかし、光の粒子になって消失していかない。


 すると─────……。


  土手っ腹に大穴を空かした豚王オーク・キングが、爛々と揺らめく紅眼を此方こちらへ────────向けた。


 「ブモォォォオオオオォォォオオオオッーーー!!!」


 豚王から迸る雷鳴の如き叫声。大気が大きく鳴動する。


 そう、いつも通りの光景、だ。

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