第7話:ジュエルタートル・亜種

 蒼然としたトンネル内を淡々と歩いていく。

 実は表情に出ていないが、内心ヒヤッヒヤッである。

 だって食料ないし、初っ端に見た魔物はアレだよ? そりゃビビるわ。

 とにかくソード・タイガーより弱い魔物やつでお願いしたい。

 そう思いながら魔物がいる部屋まで歩き続ける。

 すると、あの正方形のとても広いエリアに着いた。そのまま出ず、またしても隠れる。

 これはもう定番だ。そしてエリア内を見る。魔物を探す。

 五つのトンネル全てが正方形のエリアに繋がっているのか……?

 そんなことを考えながら探していると、ググググゥーっという声がする。

 そちらへ見やると、遂に魔物を見つける。 

 ソイツは正方形の右角で丸まり、いびきをかきながら熟睡していた。

 虎に続いてまたしても大きく、太い。亀だ。大亀。

 体長はあの虎よりは小さいが約三メートル。それでもデカい。

 甲羅には黒色の宝石がびっしりと生えていた。体重も相当だろう。

 威圧感プレッシャーは虎より無い。というか、相当落ちる。

 これは期待できそうな予感だ。そのまま《鑑定》を行使する。が───


 ──〔ステータス〕──

 [名称]なし

 [種族]ジュエルタートル(亜種)

 [レベル]148


 「………はぁー………何なんだよここの洞窟。マジで初心者殺しだろ………」


 溜息が出る。いや、さっきよりは弱いよ? でも………普通に強くね? しかも、安定の亜種。

 名無しなのは良いけどさ。レベル高ぇし。何ここ。弱い魔物やついないの? 

 絶対に戦闘未経験者が来るところじゃないって。おかしいだろ。龍とかいるし。封印されてるけど。


 閑話休題。


 愚痴るのを辞め、改めて作戦を思い出す。 たしか作戦名は────先手必勝! 誰でも簡単♪ 楽々な倒し方だぜ!!────だったな。

 奇襲ということで最初に使うのはこれだ。


 ポケットから白い球を取り出す。


 ──そう、硬式用野球ボールだ。バットは後で使う予定だ。

 まず、これを最初に投擲。命中したら疾走。そのままバットでタコ殴り! って感じだ。出来たらの話だが。

 命中しなかった場合は様子見だ。そこからは状況による。

 防御とか絶対出来ないから回避を優先でいく予定だ。

 今、絶対にただの野球ボールでは宝石で出来た甲羅を持つ、あの亀ジュエルタートルには傷一つ付けられないだろ。

 やっぱり、バカじゃん(笑)。っとか思ったでしょ? フッフッフッ……。甘い、甘いなっ! この俺が何も考えていないわけがあるまい。(ドヤッ)

 ここで役立つのが以前やった確認と鍛錬。そして我流・スキルだ。

 ボールを握る。次に『破壞力ディストラ』を生成し、収斂。

 それをボールへ巧緻に纏わせる。サポートには《支配帝テミス》を行使。

 《存在強化》で全身強化し、深呼吸。リラックスしてからジュエルタートルをロックオン。

 其方そちらへ見やると、どうやらまだ熟睡しているようだ。

 肩を回す。力まず全神経を研ぎ澄まし集中していく。

 腕を振り上げ、足を上げ、力強く踏み込む。

 そのまま全身を使い、あらん限りの力で腕を───────────振り抜くッ!


 「───“破壞の死球デッド・ボール”───ッ!!!」


 ボールは赤黒い赫々とした軌跡を描きながら光速で亀に向かって一直線に進んでいく!


 ヒュルルルッ─────ズパァァァァンッ!!!


 見事、横っ腹に的中。そのまま穿ち、大量の鮮血が宙へ舞った。

 本来ならここからバットを持ち、怯んでいる内にタコ殴りをしに行くはずだったのだが、ジュエルタートルは既に──────絶命していた。


 「……………へ?」


 見事な間抜け面。投げた本人が一番驚愕していたのである。


 「………………威力強過ぎじゃね?」


 元々、『破壞の死球』は牽制用だ。命中し、怯めば良いなという程度の認識だったのだから。

 だがしかし、まさか勢い余ってあの巨体を撃ち抜くとは。

 確認と鍛錬時に本気の投球をしなかったため、想定外の威力だったのだ。

 良い意味でまさかの結果に間抜け面のまま固まっていると、ゆっくりと亀が光になっていき──────消滅した。

 すると突然、ステータスと同じ透明なパネルが眼前に現れた。


 ──〔リザルト〕──

・ 黒石の殼籠手オブシディアン・フィスト:(金級)

・ 赤のタートルジュエリー:(Ⅵ)


 目の前に光の粒子が収束していき、黒の籠手と赤の宝石が一つずつ顕現した。

 それはこの世界で初めて手に入れた魔法武器マジックウェポンとアイテムだった。

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