第5話:何時の間にか肉体改造されてました。

 あれから一〇分ほど。俺は既に魔力枯渇から全快していた。

 それからなんやかんやスキルを使って確認や鍛錬をして《支配帝テミス》で魔力の制御を覚えたり他のも使ってみたりしていたら、一つ大事なことに今頃気付いた。

 俺、何故か身長が縮んで総身も筋肉質になってんだけど。

 なーんか目線の位置が少し違ったり、身体が動かしやすいなー……。って思っていたら。

  確認したら今では百メートル走を三秒か四秒くらいで走れるようになっていた。

 しかも持病であるアトピーも治った。マジ最高。身体が痛くねぇ。

 あと、見た目も心なしか美形になっている、気がする。外見の年齢は一五歳ぐらい。若返った。


 「フッフッフッ……。これで俺にも春が到来するぜ! まあ、無理だろうけどな……」


 妄言はさておきこの洞窟を本格的に攻略、あるいは脱出しなければならない。

 何しろいきなりの異世界転移で現在地も分からず、先程も言ったが食料も無いという状況なのだ。

 今ある手持ちは野球バッグにバットとそのケースが一つずつ。

 グローブが一つと硬式用ボール二個。

 あと、その他サポートアイテムが数点(エルボーやバッティンググローブなど)という感じだ。野球道具しか無い。

 服装は野球のユニフォーム上下にスポーツ用メガネという感じだ。


 ………うん、ダサい。


 元の世界あっちでは、理解して貰えるけどこっちでは無理だろうなぁ。

 通行人のイマドキ異世界女子に「なにあれダサー……。ぷぷっ」とか言われて、笑われそうだ。

 この服装で、洞窟から出たくねぇわ。はぁ………。どうすりゃいいんだよ。


 閑話休題。


 野球バッグやバットケースは戦闘が起こる可能性があるので一旦、この場所に置いておくことにする。

 バットを持ち、ボールをポケットに入れて行動開始。

 以前も言ったが俺を中心としてサークル状で、外周部に星形の配置でトンネルが散在している。

 なので、まずは前方の湖の向こうにある、トンネルから入っていくことにした。

 その途中『それ』は姿を見せた。


 「うおっ! デカっ!?」


 湖を通過する時もう一度水中を見てみるとめっちゃ巨大な魚がいた。

 シーラカンスみたいな容姿をしている。どうやら今のところ襲っては来ないが。

 ここがファンタジーの世界かと改めて実感した。気合いを入れ直す。 

 ──トンネル内に入る直前それに気付く。

 トンネル入り口の表面に薄い光の膜のようなものがあったのだ。

 通過してみるが何ともない。

 それを何回か繰り返してみるがやはり何ともなかった。

 あっ、忘れてた。《鑑定》スキル使えるじゃん。

 すぐさま行使。すると───────……。


 ──〔オブジェクト〕──

 [名称]封印の障壁ふういんのしょうへき(残滓ざんし)

 ・龍の封印に使われている障壁の残滓。


 「っ!?」


 それを呼んで俺は驚愕と安堵を同時に感じるという、レアな体験をした。

 もう一度脳内で理解する。龍は封印されていた。衝撃事実だ。


 「いや、龍、封印されてるんかい。あんだけビビってた俺は一体………。まあ、封印だからいるにはいるんだけどね」


 障壁なのに通れたら意味ないじゃん。

 ……まあ、残滓だからしょうがないか。

 普通に『封印の障壁』を通過。

 慎重にトンネル内を進んで行くと、正方形のとても広いエリアに出る、前に隠れた。

 何故なら、ハッキリとではないが、ついにファンタジーの代名詞である“魔物まもの”に出会ったからだ。

 願わくば、強い魔物に出会わないように。

 序盤は弱いやつで! と、ひたすら願う。

 だが、現実は非情だ。少し暗くてハッキリと見えないのだが、デカい。

 敵に見つからないよう黙然もくぜんと《鑑定》を行使。

 すると、簡易だがステータスが見えた。

 その魔物まものの正体は──────────………。

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