case32.冴原美憂
第1話
何がどうなったの。
有り得ない。
有り得ないよ。
この世に、私のこと好きになる人がいるなんて。
◆ ◇ ◆
お昼の屋上。
私、
なんで?
なんで、彼は急に私のこと抱きしめたの?
黒崎君とは、私が彼氏と別れて、屋上で泣きじゃくってるときに知り合った。
そして、なんかいろいろあって私のこと好きになってみなさいよって意味のわかんないこと言っちゃって、その日からずっとお昼一緒にご飯食べている。
もう泣き喚いてるところを見られてから、変にキャラを作ることもないだろうと私は素で接した。
感情的で、思ったこと口に出しちゃうイヤな性格を曝け出した。
こんな私、絶対に好きになれないでしょう? こんな可愛くない子、絶対に嫌でしょ。
そう、思ったのに。
今、私は黒崎君に抱きしめられてる。
「……く、くろさき、くん……?」
「……なに?」
「な、なにって……」
何って聞きたいのは私の方だよ。
なんで君は私のことなんて抱きしめちゃってるの? なんで?
全然分かんない。
私のこと可愛いって言ったりしてさ。何考えてるの?
「だって、可愛いから……つい」
「つ、ついで抱きしめないでよ」
「嫌だった?」
「嫌、ってワケじゃ……」
嫌じゃないよ。
だって、今、物凄くドキドキしてるもん。
こんな風に抱きしめられたの初めてだし、当たり前のように可愛いなんて言われたのも初めてだった。
ドキドキしないなんて、無理。
無理だよ、絶対に無理。
心臓が破裂しそう。
どうしよう。どうしよう。これは、恋じゃないよね。だって、黒崎君のことそんな風に思ったことないもん。
だって黒崎君が私のこと好きになるなんて有り得ないもん。
「嫌じゃないなら、いいよね?」
「よ、よくない!! お、おお女の子に軽々しくこんなことしたらダメ!」
私は黒崎君の胸を押して、彼を自分から離した。
呼吸が、上手く出来ない。苦しい。
何これ。何これ。
こんなの、知らない。
「美優、顔真っ赤だよ」
「だ、誰のせいだと!?」
「俺のせい?」
「……っ」
黒崎君、なんで嬉しそうな顔してるの?
なんで? 私、メッチャ困ってますけど!?
「俺、美優のこと好きかも」
「は!?」
「だって可愛いし、一緒にいて楽しいし」
「え、ええ!?」
「うん。好き。好きだよ、美優のこと」
なんで。
なんで?
なんで黒崎君、私のことすきとか言ってるの?
有り得ない。有り得ないよ!
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