第2話



 君の隣にいられるなら、僕の気持ちなんていらない。



 捨ててしまっても構わない。





 そのままで、いたいんだ。





 ◆◇



「……」


 なんか、頭がボーっとする。

 何となく体がダルいような気がしなくもない。風邪かな。

 そう思いながら、僕は学校へと向かう準備をした。これくらいなら大丈夫だろう。休んだりして心配かけたくないし、明日は休みだ。明日ゆっくり休めばいい。


「……っ、ふう」


 フラつく足に力を入れて、学校へと登校する。

 心配なんてさせたくない。シンに、心配なんて……




 ◆




 どうにか学校に着き、授業を受ける。

 ヤバい、熱上がってきたかもしれない。先生の声が何一つ頭に入ってこない。でも周りには気付かれていない、と思う。元々僕は目立つ方じゃないし、髪で顔も隠れちゃってるから気付かないのも無理はない。

 あと少し。あと少し我慢すれば帰れる。授業は全部終わったし、今日は委員会も何もない。


「ほーちゃん、ほーちゃんってば」

「え」


 萌々ちゃんの声に、僕はハッとして顔を上げた。

 ヤバいヤバい、少し意識飛んでたかも。


「今日、久々にみんなで遊びに行こうって話してるんだけど、ほーちゃんも行かない?」


 今から? 萌々ちゃんの後ろには蓮と雅弥が帰り支度を済ませて待ってる。あれ、シンはいないのかな。でもみんなでって言ってるから、きっと一緒なんだよね。

 それにしたって、何で今日なんだ。タイミング悪いよ。どうしよう、なんて断ろう。用事があるから、でいいか。いつも通り、普通に、ゴメンって。

 そう、言えばいいだけなのに。

 なんでだろう、声が出ない。視界が、変だ。頭がグラグラする。


 ゴメン。

 ゴメン、って。今日は、用事があるんだ。だから、また今度一緒に遊ぼう。


 そうしたら、あとは帰るだけ。

 帰るだけなのに。


「ほーちゃん?」

「おい、逢来?」

「逢来くん!」


 みんなの声が聞こえる。

 近くにいるはずなのに、遠くから聞こえる。


 あ、れ?

 倒れた気がしたのに、地面にぶつからない。

 何か暖かいものに包まれてる気がする。何でだろう。


「逢来」


 声がした。

 優しい、声。

 シンの声だ。僕の好きな声。

 大丈夫だって言いたいのに、声が出ない。もう、意識が遠ざかる。


 シン。シン……




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る