第3話
可愛い。
可愛い、君。
ずっと、離したくないんだ。
◆◇◆
今日は休日。
学校もバイトも休みになった今日は、絢ちゃんとのデート日。ちなみに連休です。つまりだ、泊まりも可能な訳です。
だから、泊まりです。でも絢ちゃんには内緒。サプライズで喜ばしてあげたいからね。
人気テーマパークのリゾートホテル。俺、頑張っちゃったもんね。
朝から駅前で待ち合わせて、俺らは遊園地に来てる。
ここに来るのも久しぶりだな。最後に来たのはいつだったかな。確か高校の卒業後に一回来たくらいかな。
あの頃はみんな彼女なんていなくて、俺らはいつまでも仲間だぜなんて言ってたな。
悪いな、みんな。俺、もう勝ち組なんだ。
「先輩、どれから乗ります!?」
「そうだねー。まずはジェットコースターじゃない?」
「じゃあじゃあ、あれ行きましょう!」
そう言って絢ちゃんが俺の手を引っ張って、この遊園地一番の目玉アトラクションであるジェットコースターに走っていく。
ここのジェットコースター、ギネスに載ったらしいね。だから気にはなっていたんだ。
日本、いや世界屈指の絶叫マシン……下りてきた人の足はみんなフラフラしてる。子供なんかは号泣だよ。
これ、アトラクションとしてはどうなんだろう。
「きゃああああああああああ!!!」
「のおおおおおおおおおおおおおおお!!」
俺、死んじゃう気がします。
ジェットコースターから下りて、ニコニコ顔の絢ちゃんに対して俺はフラフラ顔面蒼白。あれはダメでしょ。
人が乗っていいものじゃないよ。
「先輩、大丈夫ですか?」
「うん、ちょっと死んだ爺ちゃんに挨拶してきたくらいで済んだから……」
「先輩、それヤバいです」
さすがだね。これはギネス級だわ。
まだ世界が回ってる気がするもんね。
それにしても、絢ちゃんはタフだなー。あれ乗ったのにピンピンしてるよ。もう一回乗れちゃいそうだよ。でも俺はもう二度と乗らないよ。
情けないけど絢ちゃんに飲み物を買ってきてもらって、俺は何とか回復した。
「さて、次はどうする?」
「そうですね。グル―っと色々見ていきましょうか。目指すは全アトラクション制覇です!」
「マジで?」
それから俺達は端から順に色んなアトラクションを楽しんだ。
絶叫系からホラーハウス、可愛い感じのものから全て。おかげで日が暮れる頃にはもう俺フラフラ。ホテル、予約しておいて正解だったな。
「絢ちゃん、そろそろ帰ろうか」
「そうですね。先輩、大丈夫ですか?」
「うん、平気平気。んじゃ、行こう」
俺は絢ちゃんの肩を抱いて、遊園地から出る。
向かうのは勿論駅じゃなく、目の前のホテルだ。
「え、え? 先輩、そっち駅じゃ……」
「いいのいいの」
「え、でも」
絢ちゃん、目を丸くしてる。
可愛いなぁ。今日は俺の家に泊まっておいでって言ってあるから、ビックリしただろうな。
ホテルに入り、チェックインを済まし、案内された部屋へ向かう。
スゴイよ、俺。スイートルームって奴ですから!
「う、わぁ……!」
部屋に入ると、窓からは遊園地が一望できる。丁度パレードをやっているところみたいで、イルミネーションがメッチャ綺麗。
絢ちゃんも目をキラキラさせて見てる。
良かった。喜んでる。その顔が見れただけで、俺の疲れは吹っ飛ぶよ。
「先輩、ありがとう」
「いいえ。絢ちゃんが喜んでくれれば、それでいいよ」
絢ちゃんの頭をそっと撫で、胸元に引き寄せる。
可愛い子。本当に、最高に愛おしい。
ずっと一緒にいたい。本気で、そう思ってる。
だから俺は、決めたんだ。
君と一緒に、ずっと一緒にいられる資格が欲しい。
その、証が欲しい。
「絢ちゃん。俺、実はさ……来年から新しく出来る店舗の支店長を任せてもらうことになったんだ」
「え? 先輩が!?」
「うん。でさ……絢ちゃんにも、来てほしいんだよね」
「私も……いいんですか?」
「勿論。颯太さんにも話はしてあるよ。やっぱり、経験者はいてくれないとね」
「……はい」
「でね?」
俺は絢ちゃんの左手を取った。
小さな手。俺のことを支えてくれる、優しい手。
「絢ちゃん、俺と一緒にいてくれる?」
「先輩……」
「この先も、ずっと。俺の傍に、いてくれる?」
俺は、彼女の薬指に指輪を嵌めた。
そんなに高いモノじゃないけど、俺にしては奮発した方だ。所謂、給料三ヶ月分ってヤツ。
絢ちゃん。
俺はね、君が思ってるほど恋愛経験がある訳じゃないんだよ。
まだまだ自信持って大人だと言えない。そんな俺だけど、君のために、君との将来の為に、頑張りたい。
いいかな?
「俺と、結婚してくれますか?」
絢ちゃんの目に、涙が溜まってる。
言葉にならないのか、嗚咽を漏らしながら必死に頷いてくれてる。
「絢ちゃん、ありがとう」
「ん、うんっ!!」
絢ちゃんをギュッと抱きしめた。
ありがとう、絢ちゃん。
「俺、最高に幸せにするからね」
「はい……はい!!」
「絢ちゃんが卒業したら一緒に暮らそうね」
「はい!」
「贅沢な暮らしは出来ないだろうけど、我慢してくれる?」
「は、はい!」
俺達は、ただただ抱きしめ合ってた。
ねぇ、絢ちゃん。
今日はね、俺が絢ちゃんを初めて見かけた日なんだ。
そんなこと、君は知らないだろうけど。
今日は俺が君を好きになった、特別な日なんだ。
だから、今日が良かった。
これからも、大好きだよ。
ずっと、二人でいよう。
そしたら、毎日が最高に幸せだから。
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