第2話



 ずっと傍にいて。


 離れないで。


 愛してて。




 ◆◇◆




 翌日。

 私はふと目を覚ました。時計を見ると、まだ4時。

 そっか、あのまま寝ちゃったんだ。お風呂入って、いっぱいキスして、ベッドでもずっとずっとキスしてた。

 何だか止められなくて、寝るまでずっと抱き合っていた。

 生まれて初めてかもしれない。こんなに目覚めの良い朝は。

 好きな人の顔を起きて直ぐ見れるなんて素敵。

 閉じ込めちゃいたい。麻里奈が、私以外の人を見ないようにしたい。私以外の人と喋らないようにしたい。

 この部屋に、閉じ込めたいな。


 でも、ダメよね。

 そんなことしたら、嫌われちゃう。

 だから、せめて私と一緒にいるときだけでも、私のことだけ考えていてほしい。

 この部屋にいる間だけでも。


「ん……」

「おはよう、麻里奈」

「……まどか……?」


 寝ぼけてるのね。可愛いな。

 ちゅって唇にキスしたら、麻里奈は私の頭の後ろに手を廻してきた。もっとって、強請るみたいに。


「ん、ふ……」

「う、ん……麻里奈……」


 また止まらなくなっちゃう。

 どうしてキスってこんなに病み付きになるんだろう。胸がドキドキして、体の奥から何か熱いものが込み上げてくるみたいだわ。


「ん、ん……いま、何時?」

「まだ4時だよ。もう少し寝てたら?」

「んー……」


 麻里奈は眠そうな目をパチパチと瞬きさせた。

 そういえば、昨日は何時に寝たんだっけ? 日付が変わる前に寝たような気がしなくもないんだけどな。

 そんなことを考えてると、急に腕を引っ張られて視界がグルリと回った。


「円香も、一緒に寝よう?」


 麻里奈が私の上に覆い被さって、私の頭を抱き込むようにキスをしてくれた。

 お互いに顔を見合わせてクスクス笑いながら、触れ合うだけのキスを何度もする。

 こんなにも満たされた気分は初めて。幸せ。これが、幸せなのね。




 それから数時間して、私たちは起床した。

 昨日のうちに買っておいたパンを食べて、のんびり過ごす。

 特に何をする訳でもない。ただただ、静かにお互いのことを話したり、このあとどうしようか、なんてことを話したり。


「……そうだ。ねぇ麻里奈、夕飯はどうする?」

「うん? 私がなんか買ってくるよ。円香は家で待ってて」

「え、私も行くよ」

「円香は自宅謹慎中でしょ」

「でも、買い物くらい……」

「いいから。円香は待ってて。私の言うこと、聞けるよね?」

「うん……」


 まぁ、停学になったのは私が悪いんだもんね。

 私は買い物に行く麻里奈を見送り、部屋で彼女の帰りを待った。

 さっきまでも静かではあったけど、急に耳が痛くなるくらい静まったような気がする。


 なんか、怖い。一人が怖い。


 麻里奈、早く帰ってきて。


 心細くて耐えられない。


 私は部屋の隅っこで蹲った。

 一分が長い。時計の針のカチカチって音が耳の奥に響いてきてイヤだ。時計の電池を抜いて、押し入れに放り投げた。


 帰ってきて帰ってきて、早く。早く、麻里奈。

 やっぱり私も一緒に行けばよかった。



 こんな怖いのはイヤ。




 麻里奈、麻里奈……





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