第2話




 なんか、違う気がするの。


 これ、本当に友達っていうのかな。





 ◆◇◆




 それから数週間。

 高等部での学園生活も日常になり、当たり前になってきた。

 あれから円香とも仲良くなって、毎日一緒にいる。なんていうか、物凄く懐かれてるような気がするんだよね。あの子、人見知りなのか何なのか分かんないけど、私以外の子とは全然喋らないのよ。

 他の子とも、もっと仲良くなればいいのに。円香、可愛いから話したいって子は少なくない。他の友達と話してても円香の話題は必ず出てくるくらいだもん。

 円香にそのことを話しても、私がいるからいいって。

 そう言ってくれるのは嬉しいけど、なんかなぁ……

 あんまりベタベタされるのも、ちょっと困るときもある訳よね。


「純」


 私は小学生のときからの幼なじみ、純に声を掛けた。

 円香のこと相談するためだ。


「あれ、麻里奈。穂住さんは一緒じゃないの?」

「先生に呼ばれてる。それよりさ、純も円香と仲良くしてよ」

「なんで?」

「なんでって……円香、私とばかり一緒にいたんじゃ友達も出来ないでしょ?」

「でもあの子、誰が話しかけても無視するみたいだよ。無理じゃない?」

「そんなぁ」


 ちょっと異常じゃないのかな。人見知りだからって、そこまで極端に人を避けるものなの?

 てゆうか、なんで私にだけ懐くのよ。最初に話しかけたのが私だから? それにしたって、ちょっと、うん。好かれることに悪い気はしないけど、ここまでくると若干迷惑なのよ。

 他の子と話してるだけで嫌な顔するし。


「なんかさ、異常じゃない? ただの友達にあんなに懐くものなの?」

「さぁ? 独占欲が強いとか? たまに聞くじゃん。独占欲が強すぎて、他のこと話してるの見るだけでイライラする的な?」

「それ、異性に対してとかじゃないの? 恋人が他の異性と仲良くしてて嫉妬するみたいな……」

「それを私に言われてもね」

「てゆうかさ、もしそうだったとしてもよ? 私と円香、まだ知り合ったばかりじゃない。そんなに親しくなるほど付き合いが長い訳じゃないんだよ」

「だから私に言われても困るって」

「えー……どうにかしてよー」


 向こうに悪気があるとかじゃないから邪険にも出来ないし、かといって四六時中ベッタリされるのも困るし。

 どうしたらいいのか分かんないよー


「じゃあ、私と一緒にいる?」

「え?」

「ほら、他の子が一緒にいるときには穂住さんも近寄ってこないこと多いでしょ?」

「ああ……なんか遠慮してるのか何なのか……」

「でしょ? 私だったら気兼ねしなくてもいいだろうし」

「まぁね。ちょっと距離置けば円香も他の子と仲良くするわよね」

「じゃあ、今日は久々に一緒に帰る?」

「うん」


 そういえば純と一緒に帰るの久々。

 純って背が高くて、見た目もちょっとカッコいいから女子校でモテるタイプなんだよね。私、小学校のときは本気で純が男の子だと勘違いしたくらいだもん。

 将来は結婚しよう、なんて言ったこともあったっけ。まぁ、女の子だって気付いたときは本気で恥ずかしかったけど。



 私たちは二人で学校を出た。

 円香に何も言わないで出てきちゃったけど大丈夫かな。悲しんでいたりしないかな。もしかしたら怒られるかも。

 なんか罪悪感。でも円香にも他の子と仲良くしてほしいもんね。


 だからこれで良かったんだよ。うん。




 多分、きっと。





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