case21.清水麻里奈

第1話



 ただ、可愛い子がいるなって思っただけ。


 友達になろうと思っただけ。




 それだけよ。




 ◆◇◆



 春になり、今日から高校生。

 といっても、ここは中高一貫校。私は中学の頃からこの女子校に通っているため、そこまでの新鮮味はない。

 私は清水麻里奈しみずまりな。新しい制服、通い慣れた学校の行き慣れない高等部の校舎へと足を踏み入れた。


「おっはよー」

「おはよう、麻里奈」

「なんか変わらない顔ぶれだよね」

「そりゃそうだよ。半分以上が内部生なんだから」


 中等部からの友達、佐々木純ささきじゅんに声を掛けて自分の席へ向かう。

 黒板に張り出させた席順を頼りに、私は二列前の真ん中の席にカバンを置いた。


 あれ? なんか、ちょっと教室がざわついてる? 私はちょっと周りを見渡してみた。

 そして直ぐに目に入ったのが、私の斜め後ろの席に座る女の子。見たことない子だから、多分外部生よね。

 メッチャ可愛くて、お人形みたい。何て言うか、フランス人形みたい。栗色のふわふわの髪、色素の薄い瞳。真っ白な肌。なんか別世界の人みたい。

 だから私、引き寄せられるように彼女の元に近付いたの。ちょっとお近づきになっておこうかなって。


「はじめまして。私、清水麻里奈」

「……」


 なんかビックリしてる?

 いや、警戒してるっぽい。うーん、人見知りするタイプなのかな。そうなると私の苦手なタイプかもしれない。

 まぁ、そうならちょっと話をするだけでいいや。


「あなたは?」

「……ほ、穂住円香ほずみまどか

「円香ね。どこ中? この辺じゃないよね?」

「……ええ。ちょっと遠くから引っ越してきたの」

「そうなんだ。ねぇ、その髪って染めてるの?」

「いいえ。祖母がフランスの人で……」

「クォーターなんだ? じゃあ、その瞳も天然なんだね。いいな、綺麗で羨ましいー」

「……」


 円香、目をパチパチさせてる。いきなり話しかけすぎたかな。

 ヤバい。引かれてる? さすがにズケズケと踏み込み過ぎたかなぁ。


「もしかして、ちょっと迷惑?」

「え? あ、そんなことないわ。ごめんなさい、海外から越してきたばかりで知り合いがいないものだから……ちょっと不安だったの」


 ああ、良かった。笑ってくれた。

 そっか。周りに知り合いとかがいないから不安に思っていただけなんだ。


「そうなんだ。私、海外なんて行ったこともないし、引っ越しの経験もないんだぁ」

「……良いことなんてないわよ、引っ越しなんて」

「そんなことないでしょ?」

「え?」

「円香が越してきてくれたおかげで、こうして知り合えたじゃん」

「……」

「って、ちょっと恥ずかしかったかな?」

「ふふ、そんなことないわ。そうよね、越してきて良かったわ」


 笑った顔、スゴく可愛い。写メ撮りたくなるな。

 あ、あとでプリクラ撮りに行きたいかも。

 それに円香も全然話せる子みたいだし、良かった。高等部に入っても変わり映えないなって思ってたところだから、新しい友達が出来るのはいいかも。


「可愛いお嬢さん、あとでお茶でもどう?」

「あら、ナンパ?」

「そんなとこ。いいでしょ? 円香」

「構わないわ」




 うん、楽しい高校生活になりそう。






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