第40話 名前を決めよう!
モフモフも「きゅ? きゅ?」っと可愛い声をあげながらクラウスさんを見ている。
「モフモフ、クラウスさんのところに行きたいの?」
クラウスさんは、ビクっとしながらも期待を込めてモフモフを見ている。残念ながら、モフモフはクラウスさんから視線を外して顔を私の腕の中に隠した。
ちょ、そんな顔しないでください、笑ってはいけないのはわかっているけど……ぐっ。
気にしてませんよ感を出しながら話を変えるクラウスさんに、表情筋を殺しながら堪える。
「大体、モフモフとはなんだ? まさか聖獣の名前ではないだろうな」
モフモフ、可愛いと思うんだけどな。一応、ダメ元で聞いてみようかな。
「モフモフ、ダメですか?」
「逆に良いと思うのか?」
腕を組んで、質問に質問で答えたクラウスさんは「聖獣だぞ? そんな安易な名前を」とブツブツ言っている。
「べ、便宜上呼んでただけです。じゃあ名前どうします?」
気に入っていたけどしょうがない。モフモフがダメだとなると別の名前が必要だ。呼ぶ時に困る。
「そうは言うがな、そもそも聖獣に名前をつけていいのか?」
「どうなんですかね? でも名前がないと不便じゃないですか?」
「君は聖獣をペットか何かと思っていないか? 我々が縛り付ける訳にはいかない存在だ」
そっか、小さな姿をしてるからつい面倒見ないといけない気になっていたけど、聖獣なんだもんね。
私のしょんぼりした気持ちとは反対に、目をキラキラさせたモフモフが「キュッ! キュッ!」と力強く鳴いている。クラウスさんの言う事もっともだ。だけど、この目を見ると……。
「……モフモフも名前が欲しいみたいですよ」
何を言ってるんだと言いたげな視線をクラウスさんから向けられるが、そんな気がするのだ。モフモフを優しく撫でる。ゴロゴロと喉を鳴らして気持ち良さそうにしている姿は、本当に猫みたいだ。
聖獣に性別ってあるのかなぁ。黄金色した目のモフモフと視線が合った。ふわふわとした抱き心地で可愛いと思っていたけど、よく見るとすごく美人だ。
女の子かな?
――テ
ん? 何か聞こえたような……。周りを見渡すけれど変わった様子はなく、私がモフモフと触れ合っている間にクレルとクラウスさんが聖獣について話をしていた。
「では聖獣は生まれながらに名前を持っているのか」
「ええ、だけどさっきも言ったように私も詳しくはないのよ。1度お母様に聞いてみるわ」
「よろしく頼む。もし名前があるのなら、むやみに付けるのは良くないだろうからな」
生まれた時から名前を持ってるってすごいなぁ。名前を付けるのは良くないと言いながら、クレルに聞いてくれるクラウスさんは意外と優しい。
モフモフは撫でられるのが気持ち良かったのか、いつの間にか寝ていた。眠ったモフモフを見たクレルは、聖獣について聞くなら早い方がいいから、そろそろ森に帰るとクラウスさんに告げた。
「聖獣も森へ1度連れて行こうと思うの。お母様に見てもらった方が話も早そうだし」
「そうだな。問題なければ明日の朝出発でどうだ?」
明日の朝なら、ライスさんにお願いしていた食材も届いているはずだし問題はない。
「問題ないわ」
「私も大丈夫です」
「決まりだな。準備する事があるから王宮へ戻るが、夕飯は先に食べていてくれ」
言い終わる頃にはクラウスさんの姿はなく、クラウスさんが立っていた場所はキラキラと光の粒子が輝いていた。
「さすがは宮廷魔術師長なのかしら、魔力の使い方が綺麗ね」
いまいちピンと来ないけれど、クレルが褒めるのだからそうなんだろうな。転移魔法かぁ。
「私も転移魔法使えるようになるかな?」
「魔力の量は問題ないし、練習あるのみね」
やったー!! 練習したら使えるようになるんだ!!
「練習頑張る!!」
「リゼ!」
あ! 嬉しくて寝てるモフモフの事忘れてた。クレルが人差し指を立てて静かにと合図を送ってるが、モフモフはピクリとも動かず寝ている。熟睡してるようなので、そのままベッドの上にモフモフを寝かせて、私達はお風呂と早めの夕飯をいただく事にした。
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