第19話 魔力で畑を作ってみる
家に着くと苗木はちゃんと届いていた。
「転送って便利だよね、私も覚えたいなぁ」
チラッチラッとクレルの方をみる。
ペンダントから出てきてストレッチをしているが、もしかして中は狭いのだろうか。力を使ってペンダントの中の空間を広げてると思っていたけど、体をねじ曲げて無理やり入ってたらどうしよう……。
「……中は広いわよ」
な、なんで分かったんだ。まさか精霊とは心まで読めるのだろうか……。
「リゼって本当に何考えてるかわかりやすいわね」
どうやら読心術ではなかったようだ。良かった、クレルを好きすぎて気持ち悪いなんて思われたら立ち直れない。
「はいはい、おふざけはそこまでにして。苗木と種植えるんでしょ?私はお姉様たちの所に行ってくるから」
「はーい、さて早速植えよう!」
森は広いけれど畑はそんなに広くないから植えるバランスに悩むなぁ。とりあえずりんごとレモンの苗木は元からあるさくらんぼとオレンジの近くに植えて他の果物は新しく畑作ろうかな。
そういえば、緑の魔力で土を動かせるってクレルが言ってたよね。ふっふっふ試してみよう。うーん、場所どこにしようかな……果物は食べたい時にすぐ収穫出来る距離がいいから、決めた!家の横にしよーっと。
場所が決まれば次は畑の大きさだ。家の半分位でいいかな、後はイメージ、イメージ。……魔力を集めながら土を耕すイメージで魔力を土に向かって流す!!!
ドガガガガガガガッッッ!!!!! プッシャャャーー!!
「リゼ!? 一体何なの??」
精霊の花の近くでお姉さんたちと話していたクレルが急いで飛んできた。
「畑を作ろうとしたんだけど、お湯が出てきたみたい」
クレルは畑になる予定だった場所を見て「……良かったわね、東の国では温泉って言うのよ」と教えてくれた。
その後、クレルの指導のもと畑は別の場所に作ることにし無事に完成した。種は私たちが王都に行っている間に精霊のお姉さんたちに蒔いてもらうことになった。
少しはお手伝いしたいし、魔力は森に帰って来てから流せばいいからと。
温泉は精霊たちが喜んで入っていた。
楽しそうだ……。私も入りたいのでクラウスさんにお風呂の作り方を聞くことにする。クラウスさんが知らなくても宮廷魔術師だ、知っている人を知っているだろう。
いよいよ王都に行く日だ。
「わぁ、いい天気」
窓から外をのぞくと雲ひとつ無い澄みきった空が見える。ジェフさん達へのお土産にはさくらんぼを用意した。
渡せるか分からないけど会えたらいいなぁ。
何時にクラウスさんが迎えに来るのか分からないが早めに準備しとこうかな。
クレルも「お昼前には来ると思う」と言ってたし。
朝食を終えて畑の様子を見に行ってみると、先に食事を済ませて畑に出ていたクレルとお姉さんたちが花に水をあげている所だった。
空に青い光の粒が螺旋を描きながら集まって光の雨が畑に降り注いでいるみたい。精霊たちが一斉に魔力を使ってる姿ってすごく幻想的だ。
「きれいだね」
「ふふ、ありがとう。畑の事は安心して大丈夫よ」
精霊のお姉さんたちに後の事は任せて、出荷の荷物を台車に乗せて畑が見えない所まで持って行く。
初めの頃は畑まで来てもらってたけど、さすがに今の畑は見せれない。季節外れの野菜も花も沢山咲いてるからね。
「うぅ、重い……2回分の野菜は結構量があるわ」
3往復してやっと終わった時には汗で体はベトベトになっていた。家に帰ったらポーションで体を洗おう。
クレルが言ってた通りポーションで体を洗うとしっとりスベスベキメ細やかお肌になるのだ、日焼けした肌にはとても有難い。髪もサラサラだ。……これライラさんとマリーさん喜ぶんじゃないかな。お土産に追加しよう。
10分ほど待っていると荷台屋さんが来たので、荷物を渡し次の集荷日はまた連絡すると伝えた。
早く体を拭きたい……。
あれ? 今までポーションで体を拭いていたけど畑の水撒きみたいに私の上から降らせたらどうだろう。
水浴びみたいで汗もきれいに落ちそうだ。問題は水に魔力を込めるタイミングだよね。とりあえず水を出しながら魔力も流してみよう。
家に着くと早速タオルと着替えの用意をする。
「クレル〜、ちょっと汗流してくるから」
「はーい」
お姉さんたちと一緒にいるクレルに声をかけて家の横にある小さな部屋に入り服を脱ぐ。
お風呂と言うには浴槽もないけれど、ここで体を拭いたりしている。
この部屋は、土の上にジェフさんが加工した木が少しずつ隙間を開けて並べてあるので水を使っても大丈夫だ。
力を少しずつ集めてゆっくり魔力を練り込む。紅茶に蜂蜜を加え混ぜる感じをイメージしながら……。
イメージ大事。
サァーーーっと水が降ってくる。おぉ気持ちいい! ちゃんとポーションだ。
さっぱりした所で服を着て外に出ると日もだいぶ上がっていた。急いで作らないと。ライラさんとマリーさんに渡すポーションを作る準備をする。
「瓶に2本ずつでいいかなぁ、気に入って貰えたらまた作って送ろう」
木桶に力で出した水と精霊の花をいれて魔力を流す、キラキラ光ると花が魔力に溶けて青色のポーションが出来た。
後は瓶に入れてっと、瓶を取ろうと横を見ると唖然とした顔のクラウスさんが立っていた。
「何だ今のは? 君は一体なにをしたんだ……」
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