第12話 クレルへのプレゼント作り

 家につくと先ずご飯にする。もうお昼も過ぎている、バンさんにもらったパンを食べながらこれからの予定を決める。


 クレルが帰ってくる前にソファーとベッドを作っておこう。花柄のスカーフがあったのでハサミと針を用意して先ずは布団から作る。長さは30センチもあればいいかなぁ、形を整えてわたを詰めるとふわふわのお布団とソファーのクッションの完成だ!


 結構、生地余ったなぁ。ワンピースでも作ろうかな。もう少し布があれば色んな模様の服が作れるんだけどな。次街に行ったら買おう。そんなことを考えながらチクチクと生地を縫い合わせる……よし!


「いい感じに出来た〜! 」


 ワンピースだし手直しが必要なら直ぐに出来るから大丈夫だろう。後は、ベッドとイスの枠作りだ。

 ジェフさんが使い残した木材や釘が残っていたので、板をいくつかもらって形を完成させる。意外とうまく出来たので机も作ってみる。初めてにしては上出来だと思う。さっき作った布団とソファーのマットを敷いて完成だ。


「これでいつ帰ってきても大丈夫ね!」


 集中していたようで辺りは薄暗くなっていた。畑に水をあげなきゃ。

 

 今日はとり肉入りのポトフにしようかな、それから急いで畑に行き、野菜をいくつか採って籠に入れながら、花もいくつか摘んだところで右手から魔力を使って水を撒く。


 ふと見た空はオレンジ色に染まっていた。

 ――夕焼けって少し寂しい気持ちになるんだよね。

 ・・・・クレルも2〜3日で帰るって言ったんだからいい加減感傷的になるの止めよう。さて、張り切って美味しポトフを作るぞー!


 気持ちを切り替えて誰もいない家の扉を開ける。


「……ただいま、リゼ。里のみんな来ちゃったわ」


 中には少し申し訳なさそうにしているクレルと沢山の精霊たちがいた。


「あなたがリゼさんね! おじゃましてますわ」


 クレルの方を見るとクレルはそっと視線を外す……おやおやクレルさんどうして目を逸らすのかな? 無言のやりとりをしていると、ひときわ輝く女性が前に出てきた。あれ、何でこの精霊だけ大きいんだろ。


「はじめまして、わたくしスプレンドーレと申します。クレルを助けていただきありがとうございました」


 クレルはスーッと私の側に飛んでくると私のお母様よと言った。


「はじめましてリゼです。あの、私は何もしてないんです。偶然が重なって。それに助けてもらってるのは私の方で」


 スプレンドーレさんの美しさに緊張して支離滅裂な事を言ってしまう。

 スプレンドーレさんはクレルの話を聞いて是非お礼を言いたくて来てしまったのと微笑んでいたが、クレルがそっと耳元で(みんなリゼのパンケーキが食べたくて来たのよ、全員来るって言ったのをどうにかお母様と姉様たちだけにお願いしてきたの)と教えてくれた。おぉ……それなら期待に応えたい!


「今から夕飯なんですが、良ければ一緒にいかがですか?」


「まぁ、是非ご一緒させていただきたいわ」


 お姉さん達もきゃあきゃあと喜んでいる。


 沢山のパンケーキを作って、蜂蜜・さくらんぼ・オレンジのジャムを用意する。今日は牛乳もあったからクリームも作ろう。鍋に水を入れ火にかけ温まってきたらバターを加える。牛乳を入れ混ぜてから砂糖を加えてもう一度混ぜしばらく冷やす。

 その間に作ったパンケーキを食べやすい様に切ってお皿にのせる。

 甘い匂いに精霊たちがそわそわしているのがわかる。冷えたクリームをもう一度混ぜお皿に移してテーブルに置いて完成!


「おまたせしました。沢山食べてくださいね」


 精霊用の小さなフォークはないためそのまま出す。街にも売ってないよね……どうにかしたいなと考えていると、急にフォークが現れた。


「えっ?」


 驚いている私にクレルが「取り出したのよ」と何でも無いように言ってパンケーキを食べている。

 最初の時は手で食べてたよね……後で詳しく聞こう。

 パンケーキもジャムも完食だった。喜んでもらえて良かった。そろそろ帰るわと、改めてパンケーキのお礼を皆んなに言われ「また来るから! 」と次の約束をした。留守番だったクレルの妹たち用にパンケーキとジャムも渡す。残っていたハーブ入りのクッキーも入れておいた。


 精霊の里には精霊の花を通って帰るそうだ。庭に出て辺りを見回したスプレンドーレさんは「緑の魔力に溢れてて心地いいわ」と言うと右手をスッと上げた。


 金色の光の粒が集まって杖が現れると、その杖を掴んで目を閉じる


「森に守護を」


 スプレンドーレさんが短く言葉を紡ぐと森中が光の粒に包まれていく。しばらくすると光は薄くなりいつもの森に戻っていった。


「きれい……」


「森に結界を張ったからリゼさんや森に害をなす者は入れないわ。リゼさん今日はありがとう。クレルをよろしくお願いします」


 そう言って帰って行った。



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