第8話 魔力について
どうやら安全に旅が出来ていたのは、クレルのおかげだったらしい。どうりで野犬一匹にも会わなかったはずだ。
「ありがとうクレル」
「気にしなくていいわ、私を起こしてくれたお礼だもの」
もしかしてペンダントの力は全部クレルの力だったのかな? ……という事は魔術具でも何でもないペンダントを握りしめながら野菜に話しかけていたのも、私のなりきり魔術師もどきもまさか見られていたんじゃ……
「あの、クレル? 植物が大きくなったり水が降り注いだりってクレルの力なの?」
「えぇ、そうよ! 喜んでくれるかと思って……って何でそんな死んだ魚のような目をしてるのよ!」
終わった……恥ずかしい。ペンダントの力を自分の力と錯覚してノリノリで「水よ!!」とか言ってた姿を見られてたなんて。緑の魔力を持ってるなんてクレルが言うから完全に勘違いした……きっと緑の窓って言ったんだ。緑の窓も持ってないけど。
「もう! 何を落ち込んでるのか知らないけど、リゼだって同じ事くらいできるわよ。緑の魔力を持ってるし、私の祝福だって受けたんだから」
バッと顔を上げる。『緑の魔力』聞き間違いじゃなかったのか。
「緑の魔力ってなんなの? 私にも本当に使える??」
「もちろんよ。魔力はわかる?魔力は元素の集まりみたいなものね。元素は全ての根源となるものなの」
私の表情で何と無く察してくれたのか肩を軽く上げると詳しく話てくれた。
「魔力がないと精霊は生きていけないし、植物も育たないのよ。そうなるといずれ動物も生きていけなくなるわ。世界に魔力があって全てが生きていけるの。魔力にも種類があってね、火・水・土・風が四大元素と呼ばれてるの。私たち精霊は魔力の塊みたいなものだから生まれた時から力が使えるけれど、人間は大気中の魔力と自分の中の魔力をかけ合わせて力を使ってるみたいね。リゼが魔法って言っているのがそれよ」
「クレルが使っているのは魔法じゃないの?」
「違うと思うわ。人間は私たちの力を精霊魔法って呼んでるの。それに自分の中の魔力を使うって感覚がないのよね。世界に存在する魔力を使える量が人間よりだいぶ多いから使う必要がないし、何より魔力の塊だから自分の魔力を使ったら命を削ることになりそう」
確かに魔力を使って寿命が縮まるのはいやだ。
「それでリゼの緑の魔力の話ね。まず人間の大半は魔力を使えないわ。自分の中で魔力を作る事が出来ないのが原因ね、じゃあまずは、どうしてその二つに分かれたのかね」
「魔力が使えるか使えないかはその人の魔力の量によるものなの。魔力が無いから使えないって人間は言ってるけど、魔力自体はみんな持ってるのよ。ただその量が多いか少ないかでこれは生まれ持った資質ね。あとは力の使い方が単純に分からない場合ね、リゼみたいに」
それが不思議だったのだ、今まで魔力を感じた事は一度も無かった。ペンダントの魔法だと思っていたのはクレルの力だったし。
「魔力はどうやって使えるようになるの?」
「7才になった時に調べるのよ。魔力持ちを見落とさないようにって辺境の村にも魔術具が王都から渡されて、見つかった場合は必ず報告しないといけないはずよ。魔力のあった子は王都で使い方を教わるの」
「私、それしてないよ」
村でそんなのあってたかな?もしかして、小さな村だったから、子どもから魔力持ちが見つかって貴重な労働力が減るのが嫌でしなかったんじゃ…。クレルと出会わなければ一生気付く事なかったんだよね、おばあちゃんに感謝だ。
しかし街でも魔力持ちの話は聞いた事がない、なんせおとぎ話だと思ってたくらいだ。
「魔力持ちってどれくらいいるの?」
「うーん、200人くらいかな? ほとんどが貴族みたいね。強い魔力持ちだと平民でも王族と結婚したりするみたいよ。大体は魔力持ちの血筋を入れるために高位貴族が取り込んでしまうの。だからじゃないかしら?」
なるほど。
「リゼの緑の魔力は四大元素の中の土属性になるの。植物の成長や土壌管理も出来るし、本で読んでたポーションなんかも簡単に作れるわよ」
すごい……街一番の農家になれるんじゃないだろうか。そしてポーション! 作りたい! 早速作ってみたい!
「それに私の加護もあるから水属性もつかえるわ。力の使い方も私が教えてあげる!」
一生分の幸せが一気に来たようだ…
「クレルありがとう」
「だからこれはお礼なの! 気にしなくていいの。
それよりお腹すいたわ〜」
「すぐに朝食用意するね、クレルは何でも食べれるの?」
「なんでも食べれるわ! 久しぶりの食事たのしみだわ~!!!」
そうだったクレルは何十年もペンダントで眠ってたんだよね。よーし! とびきり甘いパンケーキにしよう。妖精は甘いのが好きって物語では定番だもんね! 精霊だけど……大丈夫だよね?
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