第6話 商業ギルドと本屋
ギルドは街の中心部にあった。白を基調とした二階建ての建物で想像していたより立派だ。
入り口には、荷物を乗せた馬車が停まっている。
この馬車かな? そんな事を思いながら中に入る。
入って正面にカウンターがあり数人の職員がいた。掃除が行き届いているのか清潔感のある場所だった。真っ直ぐカウンターへ行き職員に声をかけバンさんに書いてもらった手紙を渡した。
手紙を読むと「わかりました、今回だけですよ。私バンさんのパンの大ファンなの」と手紙と荷物を受け取ってくれた。送る相手の住所と名前、それから私の名前を書くとすぐに手続きが終わった。バンさんの言った通り今日の便なら3日後には着くようだ。料金を払ってギルドを出る。
次の目的地は本屋だ。祖母といた時はよく読んでいた本も村を出てからは読む事はなくなっていた。一冊でも持って来れば良かったな……2年も経ったのだきっと色々と処分されているだろう。祖母との思い出の家がないのは悲しくはあるけれど村に未練はない。今は森で野菜を育てながら自由に暮らしているだけで幸せだ。戻る事もないだろう。
ギルドから10分ほどで本屋につく。街の本屋に行くのも久しぶりだ。
そんなに遠くないのに用事で街に来ても遊びに来る事ってなかったなぁ。生活用品もジェフさん達が置いて行ってくれたもので十分生活出来てたし、食材を買いにくる位だ……たまには街に遊びに来こよう。
さて魔術師さまの本はどこかな?
キョロキョロと見渡すけれど、それらしい本はない。
「何かお探しですか? 」
奥の方から声がする。よく見ると大量の本の隙間から若い女の子の顔がみえた。
び、びっくりした…店員さんだよね…?
「あの、魔術師さまの本を探しているんですがありますか?」
女の子は少し驚くと本を持って来てくれた。
「魔法書、買う人も少ないのであまり置いてないんですよねー。初級魔法と入門書、店にあるのはこの2冊ですね」
魔法書と言うのか……全くの素人が趣味で読むのだ入門書ならむしろ丁度いい。
「あの入門書の方下さい」
「はーい、ありがとうございます。金貨一枚なります」
たっっっか!! え、高っ!!! 金貨一枚なんて見た事も無い……か、買えない……財布を出す手を止めて店員さんの顔をゆっくり見る。
「もしかしてお客さん、魔法書の値段知りませんでした? 」
「……はい」
「じゃあびっくりしたでしょ? 高い上に魔法は適性ないと使えませんからね、なかなか売れないんで置いてる店も少ないんですよ」
わはははと笑いながら「実はそうかなと思ったんですよ。魔術師っぽくなかったですもんね、お姉さん」と明るく話す店員さんと反対にテンションは下がっていく。あー、楽しみにしてたのにな……。
「そうだ魔法書じゃないけど、魔力に関係する本ならもう少し安くでありますよ」
魔力に関係する本ってなんだと思いながらも興味はあるので見せてもらう。
「ポーションや薬の作り方に薬草や毒草についての本です。魔力が無いと質の良いポーションなんかは作れないので、この辺りの本も中々売れないんですよね。だいぶ値下げしたんですけど。ちなみに銀貨2枚になります」
銀貨2枚高いなぁ。1ヶ月の生活費……けど欲しい。
無駄遣いもしてなかったし節約したら買えない事も無い、正直魔法書よりこの本の方が欲しい。ポーションは作れなくても、薬草にも興味ある。畑で作りたいな、花壇の横にスペースも余ってる。魔法の本は高いかと思って多めに持って来てたからギリギリ足りる……よし買おう!
「買います!」
「ありがとうございまーす! 確かに銀貨2枚ですね。あ、これおまけです」
本と一緒に小さな袋をもらう。
「その本と一緒にあったんですよね。何かの種だとは思うんですけどねー。なんせ祖父の代からの売れ残りでして」
「え、それなら高価なものなんじゃないんですか?」本の値段を考えると十分あり得る、さすがにそんなのはもらえない。
「あ〜おまけって言ったからですね。付属品なんだと思います。だから気にしないで下さい。花の種だと思うんですけどねー、それに芽がでるかは分からないです。長い事ここにあったので」
それなら遠慮なくいただきます!
あ、そうだバンさんに持ってきて渡し忘れたお土産持って帰るのもなんだし種のお礼に渡そう。
「あの、これ良かったらどうぞ。ジャムとトマトソースなんですが。自家製なんでお口に合えばいいですけど」
「わー! おいしそー!! ありがとうございます。ジャム大好きなんです。私、ミルキーっていいます! 是非また来て下さいね!」
ジャムの瓶に頬ずりしながらお礼を言うミルキーさんを見て、渡して良かったと思いながら森へ帰った。
森の家に着く頃には日も傾いてきた。
沢山歩いて足がパンパンだけれど、早く水やりを終わらせて本を読みたい。
「水をお願い」
畑に向かって呟くと水が降り注ぎ今日の水やりもあっという間に終了する。最近はイメージすると水の強弱もつけれるようになった。
そうだ貰った種を植えてみよう! 袋から取り出すと小さな白色の種が1つ入っていた。
「白色の種ってめずらしいなー。それにしても1つかぁ、ちゃんと芽がでるかな。貴重な種かもしれないし失敗したくないなー」
花壇の横のスペースに植えよう。ここには薬草を育てる予定だ。今日買った本を見ながら森で探したい。これだけ沢山の木や草があるのだ、見つかるといいな。
地面に人差し指で穴を開けると種を入れる。優しく土をかぶせて、ペンダントを握りしめると目を閉じて精一杯祈ってみる
「立派に育ってね……」
もしかしたらもう芽が出てるかも、と少し期待しながらゆっくりと目を開ける……うん、変化なし。
野菜にしか効果ないのかなぁ……
「そう上手くはいかないよね、さーて夕飯はパンにベーコンとたまごを乗せて、後はサラダとポタージュスープにしよう。ささっと終わらせて本よまなきゃ!」
夕飯を済ますと、大きめの桶に沸かしたお湯とペパーミントで作ったオイルを数滴入れる。
爽やかな香りが部屋に広がるこの瞬間が好きだ。
「いい香りだわ」
タオルを濡らして体を拭いていく、最後に髪を桶に付けて洗う。
すーっとして頭もスッキリとする。大きめのワンピースに着替えてタオルを頭に巻いてイスに座ると早速本を読む。
「えーっと、先ずは薬草とは……」
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