第3話 形見のペンダントは魔道具?
今日は街に野菜を売りに行こう」
その後でマリーさんの出産祝いを買いにいこう。
幸い私の作る野菜や果物は街では美味しいと評判なのだ。
「祖母に教わってて良かった」
今では生活に必要な物で有ると共に野菜や果物、花の成長は私の生きがいでもあるのだ。
一日の予定を決めるとモスグリーンのエプロンをつけ帽子を被り畑へむかう。このエプロンと帽子はマリーさんが森の家に残していたものだが、もう使わないから服も好きに着ていいと貰ったのだ。旅で所々破れた服しか持っていなかった私にはとても有難かった。
畑について野菜や果物の水やりを終わらせる。太陽はだいぶ上にきていた。トマトも収穫して良さそうだったわねとつぶやきながら、野菜の間を通り抜けてトマトの場所までいく。
「赤くツヤもいいし実もずっしりしてる」
満足気にトマトを10個ほどカゴに入れ次はズッキーニとオクラを収穫する。さくらんぼも収穫の時期だが、まだ実がつく様子もなく今年は失敗のようだ。
「肥料が足りないのそれとも合わなかったのかな、初めて作るからよくわからないなぁ」としばらくさくらんぼを見つめながら、来年は美味しく実ってねとつぶやくと急に葉っぱや幹がグングンと大きくなり次々と赤い実がなりはじめた。
え?えっ…えーーーー!!???
さっきまでの小ぶりな木は立派木となって、さくらんぼはところ狭しと実をつけている
「い、一体なんでこんな事に……」
ぼう然と立派に育った木を見ていると胸元のペンダントが淡く光っているのに気付いた。
胸元からペンダントをとりだすと緑色の石はキラキラと太陽の光を受けて輝いている。
もしかして……! 急いで近くにある小ぶりなスイカに触れながら「美味しいスイカになってね」と声をかける。スイカはググッと大きくなった。
「すごい……本当にこのペンダントが……」
昔、村に来ていた商人に王都には魔術師様がいらして人々の生活も辺境の村と違い魔術が密接に関係していると聞いた事があった。魔力を込めた物を使い火や明かりを長時間ともしたり、汚れた水を浄化させる沢山の魔具があると。もしかするとこのペンダントも祖父が畑仕事が好きだった祖母の為に選んだ魔具なのかもしれない。けれど祖母がこのペンダントで野菜を作っているのは見た事がない……うーん村人に見られたら村の物になると思ったのだろうか、祖父からのプレゼントだ手放したくは無かったはずだ
祖母がいなくなった途端嫁に来いなんて言う人達だ、村の為だとか言って取り上げる事も十分有り得る
それにしても魔力入りとはなんて素敵なペンダントだろう! 商人から魔術師の話を聞いた日は1日中興奮していたのを覚えている。物語の中だけだと思ったいた人達がいたのだ。小さい頃からお姫様の話より魔法使いの話が好きで寝る前に祖母にせがむ話はいつも国を救う魔法使いの話だった。大きくなってからは口に出すことも無くなったが変わらず大好きだった。まるで自分で魔法を使ってるみたい……! 胸元のペンダントをそっと握りしめた。
それに季節関係なく好きな野菜や果物を食べれるなんて幸せすぎる! 祖母に感謝しながら次々と野菜に話かけていく
────しまった、やり過ぎた
目の前で起こる不思議な現象が楽しくて気付けば昼は過ぎ畑一面に食べ頃の野菜や果物が溢れている。
これ全部1人で収穫出来るかな……街へは明日行くことにしようと心の中でつぶやくと収穫をはじめる
「も、もう……ムリ……」3時間ほど収穫したが畑はビバ! 豊作!!と言わんばかりに実り豊かだ。収穫した分の野菜は本当に減ってるんだろうかと虚ろな目で畑を見る。しかし横にはちゃんと箱いっぱいに入った野菜達がツヤツヤと光っている……もう考えるのはよそう、私の頭では魔術師様が作った(であろう)ペンダントを理解出来るはずもないのだ
「……考えていてもしょうがない。仕事しよう」
街のお店に届けてもらう分の野菜の仕分けを始める。
パン屋さんと八百屋さんの2つに卸しているのだが、街まで運ぶのは大変なので荷台屋に頼んでいる。
荷台屋とは名前の通り、馬に荷台をつけ荷物を運んでのだ。週に2回森へ来て貰うように頼んでいる。
注文分を箱に詰めても余りある野菜を見て、いつもお世話になっているお礼として多く入れた。けして押しつけているわけではない。
「んー、あまり沢山あげても傷んだらよくないしこの位にしよう」
そう言えば味は同じなのかな、もし魔術で変わっていたら大変だ。慌てて側にあったミニトマトを口に入れた。甘みが口いっぱいに広がってトマト特有の酸っぱさや青臭さもない
「わぁ」
美味しい、今で食べた中で一番美味しかった。
これ一つあったら農家の仕事は無くなってしまいそうだ、だから王都には畑が少ないのだろうか。王都に行ったことはないが話は聞いた事がある。農業よりも産業が主であると。
改めて魔術師様の凄さを実感しながらもう一つミニトマトを口に運んだ。
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