第2話 回想 約束

懐かしいな……。


 久しぶりに出会った頃の夢をみた。きっと昨日王都から届いた手紙のおかげね。マリーさんに赤ちゃんが産まれたのだ。






 ジェフさんとライラさんの家で過ごすようになった3ヶ月後、突然王都に住む娘のマリーさんがやってきた。手紙が来なくなったから心配して森まで来たそうだ。


「もう! 心配したのよ? 急に返事も来なくなって」


「ごめんよ、つい疎かになってたよ」


 マリーさんは口を尖らせながらも久しぶりに会った2人は嬉しそうだ。

畑で収穫した野菜をキッチンに持って行ってる間にマリーさんが来たのだ。楽しそうに話している姿を見ながらもう少ししてから挨拶しようと決めた。せっかくの親子水入らずなのだ。それならばと今日使う野菜の下準備をしようとキッチンに戻ろうとした時マリーさんと目が合った。


「あら、あなたがリゼさんね。はじめましてマリーよ。父と母がお世話になってます」


「とんでもないです! お世話になってるのは私の方です」


 ジェフさんとライラさんがいなければ生きて居たかも怪しいのだ。


「リゼそんなに緊張することもねぇ、マリーならお前の姉妹みたいなもんだからな」と後ろからジェフさんが歩いてきた。


 いくらなんでもな発言にそっとマリーさんを見ると目をキラキラさせて「いいわね! 私ずっと優しいお姉ちゃんが欲しかったのよ!」


 ふむ、どうやら私が姉のようだ……と思っているとマリーさんは更に驚く事を言い出した。


「父さん達ももういい歳だし王都に来て一緒に暮らしましょう! 新しい家を借りたの広くはないけど皆で住めるわ。また今回みたいに何かあったのかもって心配するのはイヤだわ。もちろん姉さんも一緒に」


 にこやかに笑う妹の目は本気だった……。


いち早く反応したのはジェフさんだ。


「バカ言うな、オレはまだまだ心配される歳じゃねぇ。くだらねぇ事ばっかり言ってたら旦那に愛想つかされるぞ」


「そうだよ、それにあんたライツ君にはちゃんとここに来るって言ってきたんだろうね?」


「ちゃんと言ってきてるしこの話もずっと前から2人で考えてた事なの。彼に両親は居ないけれど父さんや母さんの事を本当の親の様に思っているの。私たちが父さん達と暮らしたいのよ」


 あー何だかマリーさんの旦那さんの気持ちが分かるかも。きっと私のようにジェフさんやライラさんから沢山の愛情を貰ったんだろうな


 眩しいなぁ、こんなに思い合えてる家族なら一緒に暮らしたら良いのに。生きているんだから


「リゼ……」


 え?


 不意にライラさんに名前を呼ばれて顔を見ると悲しそうな顔をしながら「リゼはもう私たちの家族だよ、自分は関係ないと思わないどくれ」リゼは分かりやすからねと呟いた。


 ライラさんは「さて! 」と手を叩くと

「マリー今日は泊まって行くんだろ? 荷物を家に入れちまいな、王都の話はもう少し考えさせておくれよ。急には決めれないから」


 マリーさんもライラさんの返事を予想していたのか頷くと「ゆっくりで良いのよ、私たちの考えを知って欲しかったの。3日後に帰るからその時に返事を聞かせて」と中々ゆっくりでない期限を設定し家に入って行った



 それから色々あったが2人はマリーさんと王都に行く事になった。マリーさんの説得と私からもそれが良いのではないかと話をした。

3人は私も一緒に王都へ行こうと最後まで言ってくれたが、流石にそこまで甘えるつもりは無く断り続けた。

 それならばと、ジェフさんが私に住んでいた家と畑の管理を任せると言ったのだ。2人が出て行った後、私がまた旅に出ると思ったそうだ。


 鋭いなと思ったがライラさんが笑いながらリゼは分かりやすいと言っただろ?と優しく髪を撫でてくれた。家も畑も自由に使っていいが代わりに月に1度は必ず手紙を書くと言う約束だ。


 最後まで優しい2人に必ずと約束し私の新しい暮らしは始まった。




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