第23話 マリー・フォン・ハワードへの救い
マリー・フォン・ハワード
それは、今僕の目前にいる令嬢の名前です。
彼女は帝国の近衛小隊の隊長であり、またその身分故に隊長で有りながら隊員に守られるべき存在でした。
その為、捕虜となり小隊の女性が王国の兵隊の為の娼婦に身を落とした時も隊長の彼女だけは娼婦の役を免れました.
隊員全員が操を失うのと引き換えに隊長でありながら彼女の操は守られたのです。
それは、彼女も小隊が王都への搬送中に盗賊に強奪された後も同じでした。
隊員たちは盗賊達から受ける目を覆うほどの恥辱の中で生きるしかありませんでしたが、隊長である彼女は帝国の王族の一族の男性の婚約者であり、多額の身代金が取れる金の卵で有ったので恥辱を免れていました。
そんな彼女でしたが、盗賊のアジトに王国の兵士が押し寄せた時の盗賊たちの狂気からは逃れられませんでした。
もう、この女から俺達は身代金は取れない。
王国の手に落ちるなら、身代金が取れないほど壊してしまえ。
そんな盗賊の狂気が彼女を襲ったのです。
彼女を帝国の王族が見るときに一番怒りを感じる姿にまで貶めてやる。
盗賊のそんな狂気で彼女の四肢は全て切断されました。
四肢だけではありません。
貴族の淑女として将来の夫以外には決して触れさせない大切な所。
そこまでもが壊されました。
そして、傷口を回復呪文で癒すことで破壊された彼女の肉体をその状態で固定したのです。
恐ろしいまでの狂気です。
そして、とても愚かなことでした。
王国の兵士との戦いの前に回復魔法が使える魔術師の魔力をこんなことで浪費するなんてバカです。
でも、盗賊たちにとっては意味が有ることだったのでしょう。
帝国の王族にこれほどの贈り物は無いだろう。
この女の糞みたいな姿を見て俺達の怒りの深さを知るが良い。
死に際した盗賊の頭が笑い狂いながら叫んだ言葉です。
今、目の前の彼女は貴族の令嬢であれば決して経験しない幾つもの出来事で心が壊されています.
ひとつ目は、自分のために多くの部下を犠牲にしたことへの激しい後悔。
ふたつ目は、自分に向けられた王国兵士や盗賊達、特に同性の女盗賊から向けられた激しい憎悪。
みっつめは、圧倒的な暴力で痛めつけられた自分の身体。そして破壊しつくされた自分の四肢と女性としての尊厳。
僕はどうすれば彼女を救えるのでしょう?
彼女は自分を救うために、自分の自我を彼女の心の奥底のどこまでも深い、深い闇の中に隠しました.
その闇の中に沈み込んだ自我は、彼女の苦しみに満ちた日々の記憶も一緒に包み込んで隠しています.
それが功を奏して彼女の心は壊れませんでした。ただ失われたのです.
そう、自我も記憶も失った彼女は壊れた人形になりました。
でもそれではダメなんです。なんの救いにもなって無いじゃないですか。
だから、僕はなんとかしたいんです。
奴隷商の元から買い上げて以来、なにも出来ていない彼女を助けたいんです。
一方で、彼女の部下達はみんな自分を取り戻して前を向いて歩みだしています。
まだ癒されきれない心の傷は時折、彼女達の表情に出ますし、義足、義手で補うしかないない失った手足に彼女達は苦しんでもいます。
恐ろしい日々が悪夢で蘇り、悲鳴とともに飛び起きてしまう夜もあるみたいです。
でも、そんな苦しみも彼女達の生きる今の一部なんです。
僕に癒された彼女達は父様の領地で2ヶ月を既に過ごしていて新しい人生を生き始めています。
皆、僕のポーション作りに積極的に従事してくれます。
その為に大きくなったおっぱいを誇ってくれています。
「私の神子様、私の魂は御身と常に共にあります。
神子様に使える喜びをお与えくださった事を日々感謝しております」
皆がそう言いながら、片方だけ大きくなったおっぱいを僕の口に近づけてくるのはやめて欲しいんですけどね。
でも、それが彼女達の魂の救いになっている以上、僕は微笑んで受け入れます。
そして彼女達からおっぱいを飲ませてもらうのです。
そう、おっぱいです
最初は確かに魔力を吸っていたのですが、始めにミルからおっぱいが出るようになり、やがて全員がおっぱいを出すようになったのです。
ミルはおっぱいが出て、それを僕に与えられたことが殊更嬉しかったようでしばらくの間は感激で涙が止まらなかったぐらいです、
そしてその姿を見た他の女奴隷達からもおっぱいが出始めたのです
今では処女授乳として彼女達の僕への献身の象徴となっています.
そんな中でマリーの人生だけが歩みを止めたままなのです。
僕は彼女の人生を再起動させたいのです.
僕はそれが出来るポーションを彼女のために作らなければなりません。
作れるでしょうか?
そもそも、彼女はどんな救いを求めているのでしょうか?
そんな疑問に苛まされながらも僕は彼女を救うポーションを作ることを決意したのです、
だから、今からマリーのためのポーションを作るのです.
その為に、まずは、乳房の全てが引き裂かれて失われてしまい、今は醜い傷跡しか残っていない彼女の左胸にケガ回復ポーションを振りかけます。
彼女の胸に降り注いだケガ回復ポーションはえぐり取られた彼女の胸を回復させます。
醜い傷跡を隠すかのようにまばゆい光が彼女の胸であった場所を包み込みます.
そして、光が薄れると彼女の胸には思春期の少女にふさわしい可憐なおっぱいが再現されていました。
僕はそうして現れた彼女の可憐なおっぱいの頂にある、美しく儚げな彼女の乳首を口に含みます。
そして流れ込んでくる彼女の魔力を感じます。
その魔力からは、彼女の苦悶を癒そうという意思が感じられました。
ああ、そうか、そうだね。
僕は魔力の意思に同意します。
そして、彼女の魔力とその50倍はあろうかと思う僕の魔力が彼女の魔力と相まって、彼女のためのポーションが作り出されるのです。
「さあ、出来たよ。このポーションを飲んでください」
そんな僕の言葉は彼女の心に届かないでしょう。
それでも、無反応な彼女の口のポーションを近づければ、反射的に彼女はポーションを飲み干すのです。
そして効果が表れます。
彼女の目に光が戻り、知性に満ちた表情を取り戻した彼女は声を発します。
「母さま、母さまはどきょにいるの、マリーは母さまに抱っきょされたちゃいのよ。
ねえ、あにゃた、私の母さまか乳母をマーサを見ちゅけてよ」
そんなマリーの質問に僕は答えます。
「マリー、マリーの母さまもマーサも忙しいんだよ。
僕が代わりにマリーのお願いを聞いてあげるよ」
「あにゃたが聞いてくれるにょ?
わきゃちゃわ、マリーはねえ、おなきゃがちゅいてるの」
「わかったよ、直ぐにご飯を持ってくるから待ってるんだよ」
そう、僕が作り出したポーションはマリーの記憶を退行させるものでした。
今の彼女は3歳児に戻っています。
彼女が何の苦しみも苦労も知らなかった時代です。
彼女の心を救うためにはこの方法しかなったのです。
彼女の魔力もそれを望んでいましたしね。
もちろん、こんな事は長くは続けられないでしょう。
彼女の心の奥底に沈んだ自我が戻ってくるまでの緊急避難です。
でも、今は彼女に必要なのは幸せな時間です。
「さあ、マリーご飯を食べようか」
「うん、あにゃ、にぇえ、にぇえ、おにゅいちゃん、マリーのお手手がないにょ」
マリーは自分の腕が無いのに気づいたようです。
幸い3歳児のメンタリティーではそれがどんなに恐ろしいことかにはまだ気づけない様です。
「ああ、本当だねえ、マリーのお手ててはお休み中みたいだね。
じゃあ、お兄さんが食べさせてあげるよ」
「にゅん、おにゅきゃい」
「じゃあ、はい、ほら、アーン」
「にゅん、わや、おいちゅいよ。このごきゃんはおいきゅいねえ」
ニコニコ顔で僕の差し出すスプーンからマリーはご飯を食べます。
その屈託の無い笑顔に僕は救われます。
彼女が本当の自分の心に向き合うその時まで、僕がマリーの世話をする。
僕はその時そう心に誓ったのでした。
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